中国で広がった陰陽五行説

 知の爆発は中国ではどうだったか。

 後に述べる孔子や老子がこの時代の人です。

 また、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)がこの時期に台頭します。

 陰陽五行説は、陰陽説と五行説が一体化して形成されたもので、中国における宇宙生成の理論です。

 まず陰陽説とは、世界には天と地、日と月などの2大元気(げんき)があるという考え方です。

 この陰と陽が交わることによって、5元素が生まれると考えます。

 すなわち、木(もく)・火(か)・土(ど)・金(こん)・水(すい)の5元素です。

 肉眼で見える木星、火星、土星、金星、水星の5惑星に対応します。

 この5つが宇宙に存在する一切のものを構成し、5つが同調したり反撥しあったりしながら(エンペドクレスの愛憎と同じ発想です)、世界を循環させていくという考え方が、陰陽五行説のおおまかな概要です。

 後に、中国の思想や人々の生活にも多大な影響を与える陰陽五行説は、知の爆発の時代に形を整えていきました。

 中国の伝承では、陰陽という理念を生み出したのは原始の聖王と呼ばれている伏羲(ふっき)と、その妻の女媧(じょか)であったといわれています。

 2人とも人頭蛇身の神です。

 また五行説を唱え始めたのは、これもやはり神話に近い世界ですが、夏(か)という王朝の始祖、禹(う)であるといわれています。

 陰陽五行説については、本書の諸子百家の思想に触れるところで詳説しています。

この本では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を出没年つき系図で紹介しました。

 僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。

(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)