韓国ウォンを下回り
主要国で「最弱」の円

 円の対ドルレートは、21年年初には103円だったが、足元では114~115円と、1年余りで10円以上円安が進行した。同じ期間の円の名目実効為替レートの推移を、ドルだけでなく主要国の通貨と比べたのが下図だ。

 21年初より水準を低下させた通貨はユーロ、韓国ウォン、円の三つ。円は、韓国ウォンをも下回り、グラフで取り上げた七つの通貨の中で最もレートを下げている。

 昨秋から目立つ物価上昇の背景には、こうした円の弱さがある。ただでさえグローバルな資源インフレで原油や穀物などの価格が高騰しているのに、円安で買う力が弱まった結果、輸入品価格の上昇に拍車が掛かったのだ。21年11月、12月の輸入物価の上昇率はそれぞれ前年同月比で45.2%、41.9%と4割を超えている。

 輸入価格の高騰が企業物価に波及し、企業物価上昇率は前年同月比で11月9.2%、12月8.5%となった。21年の上昇率は4.8%と、第2次石油ショック時の80年(15.0%)以来の高さを記録した。

 円安は輸出型の日本の製造業にとってプラス要因と広くいわれてきた。だが実際には、日本企業の間ではすでに海外生産が定着しており、円安でも日本からの輸出数量はあまり増加しなくなっている。日本にとって円安のメリットは年々小さくなっており、その一方で輸入価格上昇というデリメリットばかりが浮き彫りになっている。「悪い円安」が進行しているのだ。

 この円の動向は22年にはどうなるのか。残念ながら、22年も円安と物価上昇の連鎖が続く可能性が高い。

 米国の12月の消費者物価上昇率は前年同月比7.0%となった。失業率も3.9%と完全雇用の水準に近づきつつある。FRB(米連邦準備制度理事会)は、3月にも利上げに踏み切るだろう。市場では22年中の4回の利上げがコンセンサスになりつつある。

 BOE(英イングランド銀行)は、21年12月にコロナ禍後初の利上げに踏み切った。ECB(欧州中央銀行)は22年1~3月期から量的緩和の縮小に踏み切る。

 一方、日本銀行は22年も現在の金融緩和を続けていくとみられるため、円の独歩安になるとの見方が少なくない。