「国産ビールでは出ない」とみられていたプライベートブランド(PB:小売りによる独自企画商品)がサッポロビール生産でセブン-イレブンから11月に発売され、売れている。自社ブランドにこだわっていたビール大手4社が“独自開発商品”を投入。市場縮小が続き小売りの強い販売力を前に変わらざるを得なかった。
「正直言って、残念だ。サッポロは技術力がある会社なのに……」
サッポロビールが生産し、11月19日に発売したセブン&アイ・ホールディングスのPB「セブンプレミアム100%モルト」。国内ビールメーカー初のダブルチョップ(メーカーと小売店ブランド並列表示)のPBに、同業他社幹部は複雑な表情を隠さない。
店頭価格198円とメーカーナショナルブランド(NB)より安いが、100%麦芽と契約栽培農家による原材料を使った本格的な商品。発売翌週は全国のセブン-イレブン店頭で大々的に拡販されたこともあり、店頭販売量で、ビール市場シェア1位のアサヒスーパードライに次ぐ売れ行きだ。
ここ数年、小売り各社は、広告宣伝費などがかからず小売店の利益率がNBよりも高いPB商品の拡大に注力してきた。食品メーカーも、「いつ店頭から消えるかわからないNBより、小売りが販売量を約束するPBのほうが売り上げが確実で、工場の稼働率も上がる」(菓子メーカー関係者)とPB供給に応じる企業が増えた。
しかし、大企業による寡占のビール業界は「小売りの下請けにはならない」(ビールメーカー幹部)と意地を見せていた。100%モルトに業界が驚いたのは、そんな事情からだ。
他社商品からの転換の
きっかけを狙うサッポロ
とはいえ、“広義のPB”はこの1年で、急速にビールメーカーの間で広まった。
PBには、イオンのトップバリュのように商品の企画から製造、販売まで小売りが責任を負い、商品には小売り名のみ表示するもの(いわば純PB)、100%モルトのようにサッポロとセブンの両社名が入るダブルチョップ、小売りが企画から関わるが小売り名を商品につけない“留型”と呼ばれるものなど、いくつか種類がある。捉え方は各社各様だが、「小売りが企画に参加し、特定チェーンで売られる商品」という意味ですべて広義のPBと見なすことができる。