今、若い人の「組織への所属意識」は本当に下がっているのか?

転職、副業、フリーランス、サードプレイスなど、働き方やライフスタイルが多様化する現代において、特に若手は会社に対してさまざまな思いを持っている。
「会社に一生を捧げる時代」ははるか昔に終焉し、
個人のキャリアの一つとして会社が存在する時代が到来した。
そんな時代にあって、組織のリーダーやマネジャーはどんなふうに個人と向き合い、個人のキャリア設計を捉えていけばいいのだろうか。
あなたは現職の上司と「転職を含んだキャリアの話」ができるだろうか。
部下から「転職の相談」をされたとき、マネジャーとしてどんな対応をするだろうか。
組織の人事担当者はもちろん、部下のキャリアと向き合うリーダー、マネジャー管理職は必読のインタビュー。
今回は、昨年末の発売直後から「新しい若手育成のバイブル」として圧倒的な支持を集めている『若手育成の教科書』の著者でもあり、サイバーエージェントの人事トップとして組織活性化を牽引し続けている曽山哲人氏に「個人のキャリアと会社としての考え方」について詳しく話を聞いた。
(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/増元幸司)

ますます大きくなる「サードプレイス」の存在

―― 若手育成に大きく関連してくる部分として、若い人たちの組織への所属意識や貢献意識が従来と変わってきていると感じるのですが、そうした点について曽山さんはどんなふうに捉えていますか。

 今の若い人たちが会社組織に対する所属意識や貢献欲求が高まっているかと言えば、難易度が上がっているというのが事実です。

 転職、副業、フリーランスなど選択肢が外に増えていることは事実で、視野を広げやすくなってはいると思います。

 会社以外のコミュニティへの所属意識が高まっている側面もあります。

 ただ、近年よく聞く「サードプレイス」という言葉にヒントがあるのではと思っています。

 たとえばコロナ禍では、一人で孤独に仕事をしている入社一年目の人が世の中にたくさんいました。大学生も同じです。

 先輩社員たちはもともとがリアルでつながっていたので「オンラインでもいいや」くらいの軽い気持ちでしたが、リモートを強いられた新入社員や大学生たちはすごく寂しい思いをしていたはずです。

 そういう人たちにとってはリアルで接点を持てる「職場のコミュニティ」がうれしいということもあるでしょうし、同じ職場だとしてもたとえば趣味のつながりなどの「仕事の関係だけじゃないコミュニティ」も価値があります。もちろん会社とは離れた形でオンラインゲームの交流や、有名人のオンラインサロンなどで接点を持つことを楽しむのもとても理解できます。

 職場以外のコミュニティに対して、所属意識が高くなったり、貢献欲求が高まるのは社会全体、全世代的に見られる傾向だとは思います。

 若い人は物理的に一人暮らしが多いので、孤独を感じやすく、サードプレイスへの所属意識や貢献欲求が高まるのも必然です。「もっと人と交わりたい」「自分の好きなコミュニティに貢献したい」と思うのは自然なことではないでしょうか。

今、若い人の「組織への所属意識」は本当に下がっているのか?

―― 社会的にその傾向はたしかに強いですよね。ただ一方で、曽山さんは会社組織の側の人で「会社に対する所属意識や貢献欲求」が高まってくれたほうがいいわけじゃないですか。そのあたりはどんなふうに考えているんでしょうか。

 そこについては「サイバーエージェントというコミュニティがおもしろい!」と感じてもらえる努力を続けるしかないですよね。他と比べて「楽しい、おもしろい、成長できる、やりがい感じる」など相対的によくしていく努力を続けるしかない、と思っています。

 昔は一度就職すると、一生その会社で働き続けるのが当たり前でしたし、サードプレイスなんて言葉もなかった。

 でも、コミュニティの形は変わっていきますし、今は転職を含めてさまざまな働き方の選択肢がある時代です。

 組織の側から言えば「自分たちのコミュニティをよくしていく努力」がより強く求められる時代になったのは間違いないです。