新型コロナウイルスのパンデミックから2年が経過した。誰もが想像しなかったコロナ禍が現実になったわけだから、さまざまな想定外の出来事に出くわし、そして新たなライフスタイルが定着した2年間でもあったようだ。そのなかで医薬品業界は旧態依然として変わらなかったと言ったらどう思われるか。少なくとも2020年から21年を振り返ると、医薬品業界は期待を裏切ったといえるのではないだろうか。
新型コロナワクチンや治療薬の開発では欧米大手やバイオベンチャーはもとより、中国にも遅れをとった。当初はアビガンなどの抗ウイルス薬の緊急承認や早急なワクチン開発に向けて、政治・行政と業界が一致団結して動くとみられたが、感染拡大が加速するなかで尻つぼみに終わったと言わざるを得ない。その過程で日本のワクチン開発や感染症に対する脆弱性が浮き彫りにされた。もちろん公表、非公表の有無にかかわらず、各企業が最大限可能な範囲で治療薬開発やコロナ対策に尽力していることは承知しているが、満足する結果が見えずに終わった2年間といえよう。
実はここまでの文章は本誌21年2月1日号での「21年展望」に執筆した序文とほぼ同様である。残念ながらコロナワクチンでは米ファイザー/独ビオンテックに先行され、米モデルナの後塵を拝す結果となった。経口治療薬についても現時点ではファイザーと米メルクが先陣を切っている。しかもこれは国内の状況であって、グローバルでの日本企業の存在感は一段と低下、地盤沈下していると言わざるを得ない。
こうなると選択肢は限られてくる。再度仕切り直してグローバル展開を強化するか、グローバル展開は海外のパートナーに委ねて自らは国内に回帰するかである。
もちろん身の丈にあった経営というのがある。徒手空拳で海外をめざしても失速するだけだ。しかしこうした姿勢は株式市場では評価されず、株価的には20年に続き非常に厳しい1年であった。