メタバースに力を入れるフェイスブック

 このメタバースの実現に、今、最も力を入れているのが、マーク・ザッカーバーグ率いるフェイスブック改めメタ(正確には、メタ・プラットフォームズ)である。すでに「ホライゾン・ワークルームズ」というバーチャル会議システム(現状はパブリックベータ版)を公開し、総額5000万ドル規模の投資を行うことを表明済みだ。

メタ(フェイスブック)が公開したバーチャル会議システム、ホライゾンワークルームズ Photo:Metaメタ(フェイスブック)が公開したバーチャル会議システム、ホライゾンワークルームズ Photo:Meta

 ご存じのように、フェイスブックなどの商業SNSは、サービス内のユーザーの書き込みやリアクションなどから得られる匿名の個人情報を利用したターゲット広告などの広告収入によって成り立っている。しかし、老舗のフェイスブックは近年、若年層ユーザーの取り込みに苦慮しており、このままでは利用者数が先細り、広告出稿量にも影響が出る恐れが多分にあった。そのため、より広い年齢層にアピールできる新たなサービスを打ち出して、次世代のビジネスの柱を確立する必要に迫られていた。

 また、同社は以前からVRゴーグルの開発と販売を手がけるオキュラスを買収してVR関連事業にも進出していたが、コロナ禍によってリモート環境が普及し、先に挙げた問題点が顕在化したことで、メタバースサービスを打ち出す好機が来たともいえる。

 さらに、同社は近年、暗号通貨リブラを発行する計画を立てたものの、セキュリティ上の懸念や、影響力のあるSNS企業が暗号通貨を発行することへの反発などから変更を余儀なくされ、今は、ディエムと改称して非営利団体に発行と管理を委ねている(現時点では発行されていない)。これも、メタバース事業を手掛けることで、メタバース内での決済と現実の通貨との橋渡しをする存在として普及のきっかけを与えられるかもしれず、そうなれば、メタにとっては一石二鳥的なメリットが得られるわけだ。