海外の企業などは職種によって異なる給与テーブルを採用していることが多く、日本型の全職種共通の給与テーブルという考え方は、いざ「報酬を上げよう」となった場合に見合わなくなっています。そこで、やや本末転倒かもしれませんが、従来の終身雇用制度で取り入れられてきたメンバーシップ型雇用ではなく、ジョブ型雇用を取り入れる動きも生まれています。

 しかし、ハイスキル人材と呼ばれるような人に向けて別の給与テーブルを用意し、社内の一部だけでもジョブ型雇用を適用しようとすると、いくら内部留保があるとはいえ、人件費というのは毎年ずっとコストとして響いてきます。すると今度は、その人件費に見合うだけの新たな成長が企業には求められます。

 成長が期待できないのに優秀な人材の流出を阻止しようというだけの理由で、このようなジョブ型の制度を採用してしまうと、組織の内部で制度の矛盾が生じかねません。高い給与報酬によって優秀な人材が増えれば、当然、その分事業を成長させていかなければなりません。優秀な人材をきちんと活用して、それが収益に寄与するような事業設計をする必要があります。

ITジャイアントが日本企業に差を付ける
「スケールするビジネス」

 マイクロソフトやアマゾン、グーグルといったITジャイアントや、シリコンバレーなどのハイテク企業の特徴は、それほど人手をかけずとも、ITやデジタル技術を活用してつくられた事業そのものが成長を実現している点です。これらは、労働集約型の逆を行くスタイルであり、ある種のデジタルトランスフォーメーション(DX)とも言えます。このようなかたちを私は「スケールするビジネス」と呼んでいます。

 スケールするビジネスでは、ユーザーが増えれば増えるほど製品・サービスの価値が高まる「ネットワーク効果」が働きます。またプロダクト同士が連携して共存共栄する「エコシステム」「プラットフォーム」が実現できており、「収穫逓増の法則」が働きます。つまり「ユーザー数が増えれば増えるほどコストがかかる」のではなく、ある一定のコストをかけた後は収益をどんどん拡大できる仕組みがつくれているわけです。

 スケールするビジネスのポイントは「IT・テクノロジーの活用」「グローバルでのビジネス展開」「既存の仕組みのディスラプト(破壊・変革)」の3つにあります。