2010年から始まった
リクルートの海外M&Aの歴史

 リクルートの積極果敢な海外M&Aの歴史は、2010年の人材派遣会社CSI(米)の買収にさかのぼる。その後も、2011年にAdvantage Resourcing(米、オランダ)を450億円、Staffmark(米)を320億円で買収し、人材派遣事業を拡大した。そして、2012年には、米国のオンライン求人情報専門検索サイトを運営するIndeedを約965億円で買収し、人材関連事業をデジタル技術で変革するHRテクノロジー事業に本格参入した。

 海外M&Aを積極化した背景についてリクルートは、「自前での海外進出より買収を選ぶようになったのは、中国事業で失敗した経験があるためだ。後発で先行者を追い抜くのは難しく、買収で『時間を買う』必要性を感じた。海外はものの見方も違い、日本市場での勝ちパターンは通用しない。現地を本当によく知る人間しか経営できない」と語っている(*2)。

 また、人材派遣業ではなく、IT技術を活用した求人情報事業を営むIndeedの買収について、Business Insiderに下記のように報じられている(*3)。

 オンラインHR事業のグローバル展開を図るリクルートにとって、検索エンジンからオンライン広告、クラウドコンピューティングまでを展開するグーグルは驚異的存在だ。グーグルがHR事業領域に参入してくることも考えられた。

 そしてリクルートは、2016年、自社最大規模となる約1897億円を投じて、欧州の大手人材派遣会社USG People(オランダ)、2018年には約1285億円でオンライン求人広告および企業情報サイトを運営するGlassdoor(米)を、それぞれ買収した。Glassdoorの求人口コミ企業情報と、Indeedの求人検索機能の補完関係を構築することで、リクルートはHRテクノロジー事業をグローバルに推進するためのコアとなる2つの事業を手に入れた。