株価と景気のボトムとピークは同時ではなく、株価が景気サイクルに先行する傾向にあるといわれている。しかし、実際には両者の関係は複雑だ。景気のサイクルから株価の変動を考えてみよう。(経済評論家 塚崎公義)
株価は景気の「先行指標」だが
両者の関係は複雑
株価は、景気の先行指標といわれている。実際、内閣府の景気動向指数の先行指数の計算には、東証株価指数の前月比が用いられている。もっともこれは、株価変動が景気変動の原因だということは意味しない。因果関係は複雑で、先に起きたことが後から起きたことの原因だとは限らないのだ。
株価の場合には、投資家たちが景気の回復を予想すると、先回りして株の買い注文を出すので、株価が上昇する。その後で予想が当たって景気が回復すると、株価が景気に先行したことになる。
景気は比較的理屈通りの動きをするため、景気の予測は当たりやすい。そのため、株価が景気に先行することも多い。
しかし実際には、景気と株価の関係は複雑だ。景気が回復を続けると、金融政策が緩和から中立、引き締めへと推移する。これは、株価の頭を押さえる効果を持っている。
景気拡大の初期には、前期の利益が小さいので、増益率が大きくなる。ところが、景気のピーク近くでは、前期の利益も大きいので増益率は小さくなりがちだ。景気が拡大すると、賃金などのコストが上昇するので、売り上げが増加するほどには利益が増えない、といったことも起き得る。
そうしたことを総合的に考えていると、著名な投資家であるジョン・テンプルトンの有名な言葉が思い浮かぶ。