答えは、「妻」です。理由を追って説明していきます。

婚姻届など正式書面にも
「妻」が使われるように

「妻」という言葉は、712年に書かれた日本最古の歴史書『古事記』にすでに使われています。

 出雲神話に登場する須佐之男の記述で、

「僕の名は、足名椎と言う。妻の名は、手名椎と言う」と、自分のパートナーの呼び方を「妻」と記しているのです。

 この「つま」という言い方は、現在でも同じですが、じつは、婚姻制度の観点から、神話の時代、あるいは奈良、平安の時代、現代とではまったく意味が違います。

 平安時代は、男性が女性の家に出向いて夜の時間をともに過ごす、いわゆる「通い婚」と言われる婚姻制度だったのです。そしてふたりの間に子どもができると、男性はパートナーの女性とともに独立して家を建て、ともに生活をするようになったのです。

 ところで、「妻」という漢字は、「簪をつけた、家事を行う成人女性」を形として描いたものですが、漢字の音では「サイ」と呼びます。

 日本語の「つま」という呼び方は、「連れ添う身」という言葉が「連れ身」となり「つま」となったと言われています。この「つま」という言葉を、漢字の「妻」に当てたのです。つまり、男女を問わずパートナーのことを「つま」と呼んでいたわけで、漢字の「簪をつけた、家事を行う成人女性」という意味は、日本語の「つま」にはないのです。

 明治時代になって、現代と同じような婚姻制度ができあがると、婚姻届などの正式な書面にも「妻」という言葉が使われるようになりました。