武家屋敷では、「妻」は屋敷の奥に住んでいました。そして、その首長の家来たちは、首長の妻のことを「屋敷の奥にいる偉い女性」という意味で「奥方」という言葉を使ったのです。

 江戸時代になると、この言い方が庶民の間でも使われるようになり、他人の妻を呼ぶときに、尊敬の意味を込めて「奥方」と呼ぶようになり、これが「奥様」「奥さん」に変化していったのです。

妻に頭が上がらなくなった
夫が呼ぶから「かみさん(上さん)」

 最後に、「かみさん」について説明します。

「かみさん」が出てくるのは、江戸時代後期、1771年の浄瑠璃『妹背山婦女庭訓』です。「コレかみさん。見ればここにも寺屋のやうに、七夕様が祭ってあるな」と記されています。

 これは、嫁から見た姑のことを「かみさん」と呼んでいるものです。

「かみさん」の語源は「上様」で、「目上の人」を表すものでした。

 ではなぜ、「妻」のことをパートナーの男性が「かみさん」と呼ぶようになったのでしょうか。

 これは「妻に、頭が上がらなくなった夫」が生まれてきたことと無関係ではないのですが、女性が家庭内の中心になり、男性がパートナーの女性から「お小遣い」をもらうようになった昭和30年代、すなわち1960年代頃から流行ってきたと考えられています。