簡単・便利だが死亡事故にも
なりかねないグラインダー

 同じような例として、グラインダーと呼んでいる工作器具があります。正式には「ディスクグラインダー」といいます。

 高速回転する砥石で、火花を散らしながら対象物を削っている映像を、テレビなどで見たことがある方も多いでしょう。

 グラインダーは汎用性、応用性が高く、いわゆる「バリ」などを素早く除去できるため、世界中の現場で重宝がられています。

 しかし、これもまた一瞬のミスや偶然が、命の危険につながりかねないケースがあります。

 高速回転している砥石と同方向に対象物が動いていると、グラインダーが強く引っ張られ、引き込まれてしまうことがあります。反対に、回転と逆側に対象物が動くと反発しあってしまい、最悪グラインダーが自分の顔や頭を目がけて飛んでくるリスクもあります。

 このほかに、じん肺や環境への悪影響もあります。それでもグラインダーを使いたくなるのは、ひとえに便利だからです。

「危険な作業自体をなくす」が
大きな効率化に!

 私が経営者になった以降も、指を切って縫ったり、重い資材を足に落としてけがをしたりする事故がありました。大事には至りませんでしたが、今思い出しても背筋が寒くなります。

 どうすればより安全にできるか。

 1つの考え方は、危険な作業の安全度を高めるアプローチ。
 しかし私は、危険な作業自体を、可能な限りなくそうと考えました。

 ワイヤーとクレーンでつっていた作業は、強力なマグネットを、大量・多種導入し、バランサーと呼ばれる機械でつり上げる作業に置き換えました。すると、危険がなくなった以外にも思わぬ効率アップが起きたのです。

 私たちは常に資材の重さを量る必要があるのですが、マグネットとバランサーの間に挟める計測機器があることがわかりました。すると、つりあげるだけで重量計測も自動的に済むようになりました。
 危険をなくそうとしたら、作業が少なくなり、効率もよくなるという「一石三鳥」の効果を招いたのです。

 マグネットにも弱点はあり、重量的な限界、形状的な限界から対応できない場合もあります。
 その際も、極力ワイヤーは使いたくない……そこで思いついたのが、フォークリフトの活用でした。

 たとえば切断機からワークをフォークリフトでつかんで下ろし、そのまま運べたりできないか?

 これが、フォークリフトにアタッチメントを装着してクレーン代わりに活用する大きなきっかけになりました。一見「邪道」な活用法でしたが、実際にやってみるとワイヤー+クレーンよりもはるかに容易、安全、高速で、実に効率的なのです。

 作業自体をフォークリフト中心に切り替え、工場の中もフォークリフトで出入りしやすいよう配置も換え、爆発的な効率改善へと至りました。