清掃を確実に、しかし短く、楽チンに!
別の見方もできます。
確実にしなければならない清掃を、できるだけ効率高く、しかしできるだけ早く済ませられれば、その分を生産に回せるのです。
私は清掃時間を半分にすることを目標にして、さまざまなアイデアや「兵器」を導入しました。
かつては、「スケール」と呼ばれる剥がれ落ちた金属くずを、人がスコップですくい、ゴミ箱に入れて回収していました。重いモノを持って体を上下に動かさねばならず、大変な重労働です。
そこで、スケール回収用のバケツを収める部分を掘り下げ、いちいち持ち上げなくても良いようにしました。満杯になったら、フォークリフトでそのまま運搬します。バケツ自体、100個以上用意してあります。
旋盤で生まれる大量の削りくずは、地下にチップコンベアを導入して、自動で集積し、やはりフォークリフトで搬出します。
機械についたグリスの汚れは、手で拭き上げていたのを止め、高圧高温のジェット水で一気に洗浄します。土間の粉じんは、ほうきでの処理をやめ、人が乗れる清掃車を導入しました。値段は1台600万円もします。しかし乗っているだけで清掃でき、楽なだけでなく楽しそうです。
整理整頓の要は棚づくり!
足りなければ外にも作る
私たちの現場では、形状や大きさ、重量に応じて大量の金型を扱っているほか、各種の工具も使います。
それらを時間を掛けずに探し、確実に取り出すことができれば、高精度かつ大きくムダを省いた生産ができます。
安全のため、そして効率アップのために、整理整頓が重要になるのです。
整理整頓の秘訣は、とにかく全体をシステム化し、大量の棚を作ってスペースを確保した上で、個人の好みやクセを排除し、誰でも迷わず分かるようにしておくこと。
棚が足りないからこれ以上は無理、という状況であっても、工場の外側に新たに軒のように屋根を設置して、そこに棚を組みました。そこら中、棚だらけです。ただの棚ではありません。数百キログラムの金型もありますので、鉄骨で組んでいきます。
フォークリフトでの出し入れのため、使用しているパレットの幅に合わせています。全ての棚は、どこに何を置くかが決まっています。
常に決まった場所に決まったモノが収まっているので、誰がやってきてもミスをしないようになっているのです。
(本原稿は、平美都江著『なぜ、おばちゃん社長は「無間改善」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』から一部抜粋・改変したものです)
平鍛造株式会社前代表取締役社長。現在は株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長。1956年東京都生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に、『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか――父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。