塩分過多だった人が食事から塩分を減らすと、味気なく感じられることが予想される。味が足りないと感じたときは、ショウガや大葉などを使用して風味を楽しんでみてほしい。洋食でもスパイスやハーブなどを活用することで、香り豊かな食事を演出している。塩分控えめの食事でも、満足感や食の奥深さを十分に楽しめるのだ。

スポーツを楽しむ人が
忘れてはいけない塩分摂取の掟

 高血圧が気になる人は、健康のためにも減塩が必要だろう。しかし、塩分は人間にとって欠かすことのできない成分でもある。体内の水分バランスの調整や細胞外液の浸透圧の維持、脳の神経細胞伝達などを支えているのが塩分だ。塩分が不足すると、脱水症状や血圧低下、筋肉の動きの低下など体の不調を引き起こす。

 特に、スポーツでは塩分摂取が重視されている。運動をして汗をかくと、体内のナトリウムが汗と一緒に体外に排出されるからだ。激しい運動や長時間の運動で汗を流したときは、塩分を含む水分補給が推奨されている。塩分を含まない水分を補給した場合、脱水症状や熱中症のリスクが上がることをご存知だろうか。

 汗をかくと体内からナトリウムが失われるが、このときに水だけを補給すると血液のナトリウム濃度が薄まる。すると、体が「これ以上ナトリウム濃度を下げてはいけない」という判断をして、水を飲むことを避けようとするのだ。さらに余分な水分を尿として体の外に排出しようとする。塩分と水分のバランスが崩れた結果、脱水症状や熱中症を引き起こしてしまうのだ。

 運動中の水分補給は、水分・塩分・糖分のバランスが重要である。日本スポーツ協会によると、1時間以上の運動をする場合、水分に対して塩分が0.1~0.2%(ナトリウムが40~80mg/100ml)、糖分が4~8%のバランスが理想的だという。市販のスポーツドリンクを購入したり、自分でスポーツドリンクをつくったりするときの参考にしてほしい。

 塩分過多や肥満、運動不足など、ミドル世代は高血圧のリスクが上昇しやすい。まずは食事で摂取する塩分量を減らす工夫をし、高血圧予防に取り組んでみるのが肝要だ。ただし運動中は、体が塩分を欲することを忘れてはいけない。高血圧など健康状態に不安がある人は、必ず医師と相談しながら塩分摂取の調整をしたい。

【参考書籍】

『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』(牧田善二著、ダイヤモンド社)