どんな時代でも生き残れる不動産投資家になるための極意とは何か? 不動産投資で利益をあげ続けるため、生き残れる投資家になるために必要なクリエイティングアルファ(新しい価値をつくる)という斬新な視点が学べると好評の『ハーバード式不動産投資術』(上田真路著、ダイヤモンド社)。不動産投資のクリエイティングアルファの秘訣を探る対談記事の第5回。対談ゲストは、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事の木下斉さん。地域再生事業家として、これまで数多くの地域活性化プロジェクトにかかわってきた木下さん。今回は、地方公務員のクリエイティブ大家さんが、地域活性化の切り札になるという話。不動産投資を始めたいと思っている人、すでに始めている人、地域活性に不動産メカニズムをつかってかかわりたい人、さらに上を目指したい人必読。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。
公務員でも、四棟までは不動産投資が可能
木下斉(以下、木下) 「公務員の人は、四棟まで不動産を持っていい」というのが人事院勧告で出ています。だから公務員でも不動産は持てるんです。僕の知り合いでも、地方公務員の人で自分で不動産を買って再生案件をやっている人を何人か知っています。そういうことをどんどんやってもらって、今度はその人たちに公共財産を運用させるという仕事を専門でやらせてあげればいいのです。
それで必要だったら外に勉強させにいくとかしないと、役所内で不動産がわかる人が誰もいないということになります。役所内に不動産がわかる人がいないから、外からプロみたいな人を連れてきて彼らにやらせるんですけど、だいたいは悪い方向に行く場合も結構あるわけです。役所で一番悪いパターンは、公共財産の活用で一番どうにもならないようなものから民間に渡そうとすることです。
上田真路(以下、上田) 完全な負の遺産から切りたい気持ちも分かりますが、それをわたされる民間もたまったもんじゃないですよね。
木下 「これってどうにかなるよね?」というものは絶対に出さないんですね。それで、20年くらい何の手入れもしていないような公共財産の廃校とかを、「これ、どうにかならないですかね」と言ってくる。自分たちが如何に都合のいいことを言っているかすら、気づいてないヤバい大家みたいな話なんです。
上田 空室が埋まらず、建物も耐震性に問題あり、解体費用も莫大、そんな箱物をもってしまっている大家さん状態ですね。
木下 はい。そうではなくて、いい立地にある公園の一角にお店を出してもらうなどの民間活用は、どんどんやればいいと思うんです。それでそのお金でちゃんとした遊具を入れて、公園をもっと充実させるとかすればいい。けれども、お金だけもらって一般会計に入れて、そのお金はどこかに行っちゃいましたという話も結構多いんです。民間に出てきてもらうためには、その公園に対してもきちんと設備投資をしていかなきゃいけないのに、そういうことを全然理解していなかったりします。今あるものを入札に出して、それで「月に20~30万円払ってくれる店子が来てくれたらラッキー」みたいな感じです。
上田 まず先に行政が魅力的な設備投資やデザイン的な投資をしたうえなら、月20~30万円想定のお家賃が上がっても、借りたいテナントさんが現れる可能性もありますよね。Creating α(付加価値をアップする)のデザインとバリュエーション(資産価値)アップを行ったうえで、民間に渡すような入札の仕組みがあるといいですね。
木下 そうなんです。まったくバリューアップをせずにとにかく入ってくれ、という入札をした場合、一番家賃を高く払ってくれる業者でいいんだみたいな結果になるので、センスのないところが入ったりします。そうすると、どこにでもあるようなチェーン店とかが公園のなかに出店して終わるみたいなパターンというのも普通に起こっています。自分たちではお金を出したくないから民間にやってもらうとか、自分たちで管理できないから民間に買ってもらおうとか、そういう押しつけ型になるのです。でも、これは公共のためで、すごい正しいことをやっているように思い込んじゃう。そのエリアの価値を高めるという観点のないプロジェクトもすごい増えています。