眠るだけで痩せます――。
怪しげなダイエット本のようだが、まともな試験の報告。
睡眠不足は過食や消費エネルギーの低下を招き、肥満につながることが知られている。ならば、十分に眠れば体重は減るだろうか。米シカゴ大学の研究チームがこの素朴な疑問を追究している。
研究者らは、普段から6.5時間未満の睡眠しかとらない80人を睡眠カウンセリング群と何もしない対照群にわけ、睡眠時間と摂取エネルギー量との関係を調べた。
参加者は21~40歳(平均年齢29.8歳)の男性41人、女性39人。体格指数(BMI)が25~29.9と米国基準の「過体重」、日本の「肥満」に相当する人で、不眠症や睡眠時無呼吸症候群、あるいは糖尿病などの持病がある人や、夜勤・シフト勤務者は外された。
カウンセリング群は、睡眠時間を8.5時間に延長することを目指し、専門家による個別カウンセリングを受け、調査期間中の睡眠-起床スケジュールの指示を受けた。睡眠時間はウエアラブルデバイスで、摂取エネルギー量は尿検査から客観的に測定している。
その結果、調査期間の2週間でカウンセリング群の睡眠時間は、平均1.2時間延長した。しかも、とやかく言われたわけでもないのに、食べる量が大幅に減り、1日の摂取エネルギー量が平均270キロカロリー減少していたのである。
また、睡眠時間が延びるほど摂取エネルギー量が減り、1時間延長するごとの減少量は162キロカロリーだった。さらに対照群が期間中に体重を増やしたのに対し、カウンセリング群の体重は、当初から平均500グラム減っている。
研究者は「効果が継続した場合、3年間でおよそ12キロキログラムは体重を減らせるだろう」とし、「ダイエットに躍起とならずとも、もっと寝るだけで減量がかなうかもしれない」としている。
日本の国民健康・栄養調査(2019年)によると、BMI25以上の男性の4割、女性の3割は「食習慣の改善に関心がない」か「改善する意思はない」という。
それなら、睡眠時間を延ばす方法を考えてみよう。ラクに体重を減らせそうだ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)