ホンダ側のメリットは?
脱エンジンに向けて改革を加速

 気になるのは、ソニー提携のメリットがホンダのどこにあるのかだ。

「数字的なものよりも、自動車領域からなかなか踏み出せないホンダが、ソニーと提携することで新たな価値を生み出せれば、ホンダの戦略にも刺激として返ってくる。電動化もただバッテリーとモーターを積めばいいというわけでなく、社会構造変化の中で新しい価値を生み出す必要がある」と、三部社長は答えた。

 実はホンダも大きな転換期にある。昨年21年4月に社長交代を発表、三部敏宏社長が就任した。三部社長は、就任直後に「2040年に内燃エンジンからの完全撤退、100%のBEV、FCEV化」を宣言した。

 ホンダのトップ交代自体も、本来6月の定時株主総会を待つはずが4月1日付に前倒しするという異例のものだったが、三部体制移行直後のこの思い切った電動化戦略は衝撃的だった。

 こうした挑戦的な目標を掲げる背景には、中核である四輪車事業の体制立て直しにある程度めどが立ったことがある。

 すでに八郷隆弘前社長体制の下で、世界四輪車事業の需給ギャップ対応、つまり英国工場の閉鎖や国内の狭山工場閉鎖など、過剰な世界生産体制の縮小を決めている。また、ホンダの創業者本田宗一郎氏以来の“本家”であった本田技術研究所の解体にも踏み切って、ホンダの歴史の中でもまれに見る思い切った改革に打って出たのだ。

 本田技術研究所社長から“ホンダ本体”の社長となった本命の三部社長は「ホンダらしさの復活」を掲げて、50年にホンダ全製品と企業活動を通じた脱炭素を目指している。今期21年度通期業績も先の第3四半期決算発表で営業利益見通しを8000億円に上方修正している。