真面目で優秀な人ほど陥りやすい負のスパイラル

──具体的には、どんな対策をするのが効果的でしょうか?

わび:一番大事なのは、仕事以外に「全く否定されることのない世界」を持つことです。職場って、「否定される可能性がある世界」じゃないですか。「失敗しちゃいけない」という緊張感もあるし、迷惑をかけられないプレッシャーもある。「否定される可能性がゼロの職場」というのは基本的にはあり得ないですよね。

 そんな環境に依存しすぎてしまうと、結果的に「職場での否定」=「人生の否定」という思考回路に陥りやすい。となると、否定された事実を覆すためにまた仕事して頑張って、また否定されて落ち込んで……という負のスパイラルに陥ってしまいます。

「忙しくても潰れない人」と「優秀でもメンタルが弱い人」の決定的なちがいPhoto: Adobe Stock

──なるほど。一般的に「優秀」と言われるような、ハードワークの人ほど、このスパイラルにハマる可能性が高そうですね。仕事で抱えたストレスを仕事で取り戻そうとして、結局ますますストレスが溜まって……というような。

わび:ほとんどの人にとって、仕事のストレスを仕事で回復するのは不可能だと思います。「全く否定されることのない世界」に回復の手段を設けておかないと、心はどんどん壊れやすくなっていきます。

 自衛隊の超メンタルが強いと言われる方々も、車が大好きで暇さえあれば洗車しにいくとか、走るのが大好きで外でランニングするとか、仕事とまったく関係のない場所にストレス発散の手段を持っていました。

 私自身もかつて、自衛隊で幹部自衛官として生きていたので、「トップの成績をとること」に執着しているところがありました。でも、限界を超えて働きすぎた結果、メンタルダウンして休職することになってしまった。「人生100年時代」と言われる中、身に起こるすべての出来事に全力で取り組んでいたら、メンタルはあっという間に壊れてしまいます。

 戦いでも仕事でも、長い期間のことを考えるときは「戦略」、短い期間のことを考えて行動するときは「戦術」が大切です。

「戦術の失敗は戦略で補うことが可能だが、戦略の失敗は戦術で補うことはできない」という言葉の通り、しっかりとした人生の戦略があれば、多少の失敗は気にならなくなります。

 優秀な人ほど自分を追い込んでしまいがちです。短期的に結果を出そうとするあまり「戦術」ばかりを気にしていないだろうか。「戦略」を考えられていないのではないか。そんなふうに自問自答してみると、何か新たなヒントが得られるかもしれません。

「忙しくても潰れない人」と「優秀でもメンタルが弱い人」の決定的なちがい