毎月1万円ずつ積み立てをしていけば、
6%の運用で30年後には約1004万円に増える

 さらに、日本の財政赤字は、世界的に見ても最悪の水準にあります。現状では、日本国債を大量に発行しても日本国内で十分、資金調達ができているので、日本国債の信用力が悪化する懸念は少ないです。

 しかし、このままいけば、どこかの段階で必ず限界が訪れます。日本国債の信用力が低下して円が売り込まれる状態、つまり円安になったら、海外から輸入しているモノの、円に換算した価格は値上がりします。これは、長期衰退インフレです。

 こうした社会保障費の負担増、あるいは円安といった外部要因によるインフレ懸念などのリスクが、近い将来襲いかかってくる可能性があります。

 それを考えると、預貯金だけで資産運用をするのは、むしろリスクを高める結果になりかねません。やはり、国内外のさまざまな資産に分散投資することによって、こうしたリスクから資産を守る必要があります。

 50歳、60歳になったら、リスク資産での運用比率をゼロにして、預貯金で安定運用するというのは、もはや過去の常識といってもいいでしょう。これからは一生、資産運用するつもりで、長期投資を考えていく必要があります。

 そして、運用さえ続けておけば、ある時点から公的年金の受給金額が減少したとしても、さほど心配する必要はありません。それまでの運用益によって、公的年金の目減り分を、十分にカバーすることができるからです。

 50歳から始めても80歳までは30年もあります。毎月1万円ずつ積み立てをしていけば6%の運用で30年後には約1004万円に増えるのです(下図)。

「人生100年時代」と言われていますが、長生きしていくうえでは、お金が大切になってきます。その大切なお金をどうやって運用するべきか。どの世代でもそれを今、改めて真剣に考えていく必要性が高まってきています。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。
つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言、国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、
個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う複数のファンドアワードで連続受賞。
口座開設数16万人、預かり資産4700 億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』他多数。