安倍政権が発足し、経済政策に関しては経済財政諮問会議と日本経済再生本部の2つが司令塔の役割を果たすことになりました。2つの司令塔がうまく機能して、安倍政権は日本経済をデフレと低成長から脱却させることができるでしょうか。ぜひ頑張ってほしいですが、現状では疑問符を付けざるを得ません。
官僚主導の運営体制
その理由は、この2つの司令塔の運営が官僚主導、とりわけ経産省主導になる可能性が高いと考えられるからです。
まず、この2つの司令塔がどういう経緯で誕生となったかを振り返ってみましょう。総選挙での自民党の政権公約には霞ヶ関の各省庁からの入れ知恵がたくさん入っていましたが、そこに経産省の発案である経済再生本部の設置が明記されていました。
つまり、元々は経済再生本部だけが司令塔だったのです。ところが、選挙後の会見で安倍首相が諮問会議の再始動を明言したので、諮問会議も司令塔に加わることになりました。
それは、官僚にとっては嫌なことだったはずです。全閣僚がメンバーの経済再生本部ならば官僚主導で運営できるのに対して、諮問会議が小泉時代のように運営されたら政治主導で政策決定されてしまうからです。
そうした官僚の発想が影響してでしょう、報道を見る限り、諮問会議と経済再生本部の合同会議が開催されることが増えそうですが、そうなったら政策は本当に官僚主導になります。全閣僚と有識者が参加する大規模な会議になれば、少数の閣僚と有識者という諮問会議の色彩は薄れ、経済再生本部の色彩が強くなるからです。
かつ、両方の司令塔を司るのは商工族で経産省に対して非常に理解ある政治家である甘利大臣になりました。甘利大臣の事務秘書官には経産省の官僚が着任しています。
加えて言えば、かつての諮問会議の事務局は内閣府に置かれ、事務局メンバーの大半を内閣府のエコノミスト集団が担っていましたが、今回は新たに両方の司令塔の共通の事務局を内閣官房に置くことになったので、この事務局は各省庁からの出向者の寄り合い所帯になります。そうなると、事務局では各省庁からの出向者が自分の役所の利害を露骨に主張することになるでしょう。