「リスキリング」として英語を習得したい
人に考えてほしいこと

【ポイント2】「完璧」を早々にあきらめる

 英語学習における自身のニーズや、目標とするレベルについてお話を聞いていると、「(私たちの母国語である)日本語と同じ感覚で英語を話せるようになりたい」という答えが返ってくることがあります。これは、ほぼ不可能であると言わざるをえません。

 なぜなら、母国語というのは、それまでの人生でずっと使い続けてきた言語です。それと同じ感覚で使えるようになる、つまり、「ネイティブスピーカーになる」ことをめざすということは、極端なことを言えば、これまで生きてきた時間と同じ年数をかけて、朝から晩まで英語を使い続けなければなりません。

 たとえ必死で取り組んだとしても、大人になってから学んだ言語を、母国語と同じレベルで使いこなせるようになるには、相当な努力と時間が必要です。それをやるだけの覚悟と意欲があるのであれば止めません。しかし、「リスキリング」として習得したい英語は、本当にネイティブレベルになることなのでしょうか?

 必要なレベルで意思疎通できれば、多少ぎこちなかったり、少し緊張していたりしてもよいのです。自身のニーズを満たすことさえできれば、ネイティブスピーカーにならずとも、実用的な英語を身につけることは十分に可能なのです。

 リスキリングのために英語を学びたいというかたに考えてみていただきたいことは、「現実的な目標を持つ」ということです。

 むやみにネイティブをめざして、何から手をつけてよいかわからず、英語の勉強を始めることさえできないくらいなら、「完璧」を早々にあきらめる。そして、目的を明確にした上で、現実的で具体的なステップを考える。当たり前と言えば当たり前ですが、「完璧」にこだわる人は意外と多いようです。できることから行動することが、「リスキリング」としての実用的な英語を習得する道なのです。

【ポイント3】「英語を使える場」を確保する

 大人になってからの学習の難しさのひとつに、「リードタイムが短い」(※リードタイム…着手から完了までにかかる時間)ということがあります。

 子供の頃、学校の勉強について、親や先生に「こんなこと学んで何になるの?」と聞いたことがある人もいるのではないでしょうか? 何の役に立つのかもわからないようなことを学ぶのに、時間と労力を使えるのが、学生に与えられている特権です。とてもぜいたくな時間ですよね。

 でも、忙しい社会人が仕事をしながら学ぶ場合は、そのようなぜいたくな時間の使いかたはできません。

 一生懸命に英語を勉強したとしても、学んだことを実際に使うまでの時間が長すぎるとモチベーションを失い、次第に優先順位が下がり、サボっている自分と向き合いたくない気持ちも相まって、いつの間にか、英語そのものから離れてしまいます。そんなルーティンに陥って、何度も英語学習を始めては挫折することを繰り返している人も多いのではないでしょうか。

 こうした事態を防ぐためにも、「学んだ英語」をいち早く「使える英語」に転換すべく、英語を使う機会をつくりましょう。オンラインの英会話でも、英語クラブでも、英語でSNS発信するのでも、なんでもかまいません。自分が安心安全と感じながら「英語を使える場」を確保しましょう。学んだ英語の知識をスキルに転換するには、実際に使うことが不可欠です。

 英語の「知識」を「スキル」にいち早く転換するためには、自身のニーズを深掘りし【ポイント1】、目的を明確にした上で、現実的な学習計画を立て【ポイント2】、実際に使う場を確保する【ポイント3】。

「リスキリング」のための英語習得を考えているかたは、ぜひ、このことをしっかりと意識してみてくださいね。

【英語ひとこと講座】
「リスキリング」(reskilling)という言葉は、「skill」に「再び」という意味の接頭辞「re-」がついており、「再教育」や「新しい技能の習得」という意味になります。「re-」以外にも、英語の接頭辞には「bi-」(2つの)、「multi-」(複数の)、「con-」(ともに)など、さまざまな接頭辞があります。接頭辞を覚えておくと、知らない単語が出てきたときに、意味を想像したりイメージが湧いたりと、手がかりができて、英語を理解する幅が広がるはずです。