全国2700社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。
「部下のプロセス」に口出しするな
上司は基本的に、部下の仕事の進め方(プロセス)に口出しをしてはいけません。
目標を決めたら、あとはそこにどうやって向かおうが自由です。そうしたほうが部下は早く成長します。
とはいえ、入社1年目の新人や、部署異動をしてきた人、あるいは、どうしても結果が出ない人がいるなら、やり方を変える必要があります。
こういう部下を持った場合は、最初のうちはプロセスを管理したほうがよいかもしれません。
ただ、原則は「進め方は任せる」を忘れてはいけません。
「素早く行動ができる環境」とは?
新人の部下を持ったとして、話を進めていきましょう。
部下が新人の場合、結果の目標だけでなく「KPI(目標のための目標)を設定すること」が求められます。
そうすることで、部下が「行動」に素早く移れる環境づくりが整います。
たとえば、企画に関する部署にいるとします。
入社して間もない部下に対して、
「1年以内に商品化を1つ実現させる」
という、彼にとっては高い目標を与えるとします。
本来であれば、その目標だけを伝えて、部下には自分なりに頑張ってもらうしかありません。
しかし、どうしても難しそうであれば、その目標のための目標、つまりKPIを設定する必要があります。
「企画書を月4つ提出する」
「毎週末に、新しい企画書を1つ仕上げる」
と、「P」の次の「D」の中身を設定します。そこまでやれば、部下の「D」、つまり行動量が減ることは避けられます。
「やってればいいんでしょ」
という安心材料は危険
ただし、「KPI」の扱い方には要注意です。
なぜなら、「手段」と「目的」が入れ替わってしまう危険性があるからです。
本来は、「1年以内に商品化させること」が目的だったはずなのに、このままのマネジメントを長期間続けていると、次のような誤解を生み出します。
「毎週、言われたとおりに企画書を出しているじゃないですか」
「毎月4つ企画書を仕上げるために、毎日残業して頑張っていますよ」
そうです。部下からすると、「KPI」のほうが「大きな目標」であるかのように誤解してしまうのです。
それにより、上のような「言い訳」を生み出してしまいます。
これは、マネジメントの失敗例として、よく起こりがちです。
設定したKPIは、大きな目標の達成につながらないと意味がありません。
先ほどのプレーヤーは、企画書を提出したのであれば、それが商品開発につながるように、次なるステップを踏まないといけません。
「企画書を1ヶ月以内に1つ通す」
「試作段階にまで話を進める」
など、大きな目標を達成するための行動を探す必要があります。
一度設定した「KPI」にとらわれることなく、つねに「大きな目標」に向かっている意識があるかどうかが試されるのです。
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年3月現在で、約2700社以上の導入実績があり、注目を集めている。最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、29万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。