一斉メールのABテストでわかったこと
私は大量の同報メールでは埒が明かないと考えた。もし出すのなら、もっと個別の事情を踏まえた内容でなくては意味がないのではないか? 私はどんなメールが有効かを知るためにABテストを行うことにした。
まず1通、典型的な飛び込み営業のメールを書いた。「貴社はこんな問題で困っておられませんか? たとえば……。そのような問題に対して弊社の営業支援システム(SFA)は……」
もう1通はそれとは対照的に簡潔な内容で、HTMLを使わずにプレーンテキストで書いた。この件で話ができる適切な人を紹介してほしいと依頼するだけの内容だ。
金曜日の午後、私はこの2種類の一斉メールを送信した。フォーチュン5000社の経営幹部を対象に100通ずつ、合計200通である。
翌朝、メールをチェックすると、10通の返信が届いていた。大企業の経営陣や部長レベルといったエグゼクティブからの返信であり、まさに話をしたいと思っていた人たちからである。
返信があったのは、すべて単刀直入で簡潔なメールを送った相手からの返信だった。返信率は10%という高率になる。10通のうち、少なくとも5通は肯定的な内容で、会社のしかるべき人を紹介してもらうことができた。それに対して、古典的な営業メールは完全に空振りに終わった。
この実験から私は、何ごとも先入観で決めてはいけないということと、実験することが重要だという2つのことを学んだ。
シンプルな紹介依頼メールが転換点
私の個人的な実験結果とも一致するが、フォーチュン5000社のエグゼクティブにメールを大量送信すると、内容によっては9%以上の返信が得られることがわかっている。私の現在のクライアント企業でも、上位の役職者からの高い返信率(7~9%以上)が毎年維持されている。
このメール送信の1ヵ月後、私は返信獲得率を6倍も高めることに成功し、そこから11件の質の高い商談案件を得て、実際の営業サイクルに乗せることに成功した。商談案件の増加は売上げの増加につながった。
このように、大企業のエグゼクティブに大量のメールを送り、最初の説明をするのに適した社内の人を紹介してほしいというシンプルな依頼をしたことが、コールドコール2.0が生まれる転換点となったのだった。
だが、1人の担当者が1通のメールを送信してそれなりの成果を上げたということと、それを組織が定期的に行って毎年同様の成果を上げるということは、話の次元が違う。私の実験的メールキャンペーンの成功は長い旅の最初の一歩にすぎない。