本田健 絶賛「すべての幸せがこの1冊に詰まっている!」
『92歳 総務課長の教え』の著者で、大阪の商社に勤務する92歳の玉置泰子さん。「世界最高齢の総務部員」として、ギネス世界記録に認定された現役総務課長だ。1956(昭和31)年の入社から総務一筋、勤続66年。「私に定年はない。働けるかぎりは、いつまでも頑張る!」と生涯現役を誓う“世界一の先輩”が、長く幸せに働く63の秘訣を手とり足とり教えてくれる。

【92歳の現役課長が教える】<br />当たり前のことを続ける<br />もっとも大きなメリット鳴田小夜子(KOGUMA OFFICE)

凡事徹底が自信を育ててくれる

【前回】からの続き

入社したばかりの若い人に、「凡事徹底」といっても、すんなりとは伝わりません。若い世代には、耳慣れない言葉なのでしょう。

でも、学校で部活動をしていた人なら、「あんたらも、部活で監督や先輩たちにいわれて『こんなことが、なんの役に立つんや?』って思いながらやっていたことが、ゆくゆくは自分に返ってきて、役立った経験があるやろ。それが凡事徹底ということなのよ」と教えると理解してくれます。

野球をやっている子どもたちは、大きな声で挨拶する、挨拶するときは帽子をとる、練習前にグラウンドに落ちているゴミを拾って整備する、グローブやスパイクといった道具の手入れをする、打ったら全力で走るといった凡事を徹底することを監督やコーチから教わっています(私はスポーツを観るのも自分でするのも大好きなので、スポーツがらみの話が多く出てきますがご了承ください)。

挨拶やグラウンド整備、道具の手入れに熱心に励んだからといって、個人のスキルアップに、直接結びつくことはないかもしれません。しかし、毎日大きな声で挨拶をしていたら、自然とチームにまとまりが生まれます。

グラウンドの整備を真面目にやっていれば、四季の移り変わりや天候に応じてグラウンドの状況がどう変わるかを目の当たりにします。それは無意識ながらも、守備やバッティングに生きることがあるはずです。

道具の手入れをしていたら、整備不良による失敗を減らせるばかりではなく、自分の弱点がわかるかもしれません。スパイクの靴底の減りに左右差があると気づいたら、投打のフォーム改良のヒントになる可能性だってあるでしょう。

凡事徹底のもっとも大きなメリットは、スポーツでも仕事でも、継続できたという自信につながるということ。特別な何かをする前に、平凡を極めることのご利益は、計り知れないものがあります。

凡事徹底ができたら、それがルーティンとなります。

イチローさんは、ルーティンを重視したことで広く知られています。高校生活の3年間を振り返り、「眠る前に毎日10分、素振りをしていました。たった10分ですが、それを1年365日一度も休まずに続けました」とおっしゃっています。

野球選手にとって、素振りは凡事といえるでしょう。それをルーティンとして、毎日欠かさず3年間続けられたところに、イチローさんのすごさがあります。

また、試合のある日は誰よりも早く球場入りし、ランニングやストレッチといった凡事を淡々とこなしていたそうです。

みんなが凡事徹底を心がけると、会社には自然と秩序が生まれます。

普段から秩序が保たれていると、それが少しでも乱されたときには、組織になんらかの異常が生じたサインだと気づけるようになります。それは、仕事の失敗を減らすことにつながるのです。

個人としても凡事徹底を心がけていれば、いつもと違う自分の心と身体の異変に早めに気づけるようになります。集中力が落ちたと思ったら睡眠時間を増やしたり、元気がないと思ったら栄養たっぷりの食事をとったり。その積み重ねにより、つねにベストの体調が維持できるようになるのだと思います。

【次回へ続く】