日本にとって、今や世界第2位の経済大国となった中国の重要性はますます高まっている。しかし、尖閣諸島問題などの政治要因により、2012年の両国関係は大きく揺れ動いた。新指導部が正式に発足する2013年、中国の政治体制にはどんな“チェンジ”が起きるのだろうか。また日本は、新しい中国とどんな関係を築いていけばいいのか。中国情勢に詳しい東洋学園大学人文学部の朱建栄教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

「保守派の台頭」は本当なのか?
中国新指導部にまつわる巷説の真偽

――昨年11月の第18回中国共産党大会において、習近平氏が胡錦濤氏に代わる次期総書記に選出され、中国の新指導部の顔ぶれが決まった。今年3月の全国人民代表大会では習氏が国家主席に、李克強氏が首相に選出され、新指導部が正式にスタートする。

 ただ、党の最高指導部となる中央政治局常務委員7名の人事をめぐっては、「保守派の台頭ではないか」という声も出ている。習氏を筆頭に保守派の江沢民閥が7名中5名と多数を占めたこと、改革派の胡錦濤閥で政治改革を進める李源潮氏や汪洋氏が委員に選出されなかったこと、そして習氏と李氏の2人以外が皆60歳以上の長老たちであることなどが、こうした見方の背景にある。今回の人事をどう見ているか。

【テーマ2】中国の政治体制<br />“チェンジ”を迎えた中国とどう付き合うべきか?<br />新指導部の動きから見えてくる日中関係の未来図<br />――朱 建栄・東洋学園大学人文学部教授に聞くしゅ・けんえい
東洋学園大学人文学部教授、学習院大学で政治学博士号を取得。専門分野は中国の政治外交史。1957年生まれ。中国上海市出身。華東師範大学卒業後に来日し、東京大学非常勤講師、東洋女子短期大学助教授を経て、現職。 主な著書に『毛沢東の朝鮮戦争――中国が鴨緑江を渡るまで』『江沢民の中国――内側から見た「ポスト鄧小平」時代』『胡錦濤対日戦略の本音――ナショナリズムの苦悩』『中国で尊敬される日本人たち:「井戸を掘った人」のことは忘れない』など

 中国では、前の指導部のトップが新指導部の相談役になることが決議で明文化されている。それは政治の継続性を損なわないためで、江沢民氏の立場も同じだ。それが世間からは、昔のリーダーが院政を敷いているように見えてしまう。

 しかし、今回胡錦濤氏は、引退した党高官の政治介入を禁じる内部規定を設け、自身が党の軍事委員会主席を辞めると共に、江氏にも全面引退を約束させた。これにより、新指導部が江氏の影響下に置かれていると見ること自体に、意味がなくなった。

 また、60歳以上の長老が増えたことについては、指導部に発言力のあるカリスマがいなくなってしまったため、皆がおおむね満足する、あるいは皆の不満を最小限に止めるための権力移譲の方式を選んだと思われる。長老を外していきなり指導部を若返らせると、裏で不満が燻り、若い世代だけでベテランたちを抑えることが難しくなるからだ。