政治家の特権乱用などに対しては、毎年十万件とも言われる抗議運動が起きている。インターネットなどの情報化社会の到来で、当局はそれらの声を押さえ込むことが難しくなった。

 ただ、日本で考えられている中国の格差問題は、ポイントを押さえていない。この30年の経済成長で9割以上の国民は生活水準が上がっており、最低限の生活すらままならない貧困層が多い状態では、すでになくなっている。

 ではなぜ不満が噴出するのかと言えば、主な原因は一握りの富裕層に対する中産階級の不満、つまり分配の不公平感だ。その結果、特権階級と見なされている共産党や役人への不信感が蔓延している。今回の党大会でも、社会・福祉問題や共産党政権への不信に対する危機感が示された。

中国の10%成長はもう終わっている
足もとの数字が実態に追い付いてきた

――そうしたなか、中国は持続的な成長を維持できるだろうか。

 中国の2012年第3四半期の成長率は7.4%となり、確かにここ数ヵ月間下がり続けている。しかし私は、一時的に成長にブレーキがかかっても、大きな落ち込みはなく、安定的に推移すると見ている。

 そもそも中国は、労働人口の構成などから見ても、10%成長の時代はすでに終わっている。世界銀行の見通しによると、中国の成長率は2012年が7.5%、2013年は8%程度となっているが、おそらくそのへんが上限だろう。

 政府自身は、2015年までは平均7.5%~8%、2015年~2020年までは7.0~7.5%、2020年以降は5.0~6.0%の安定成長を持続することを目標に掲げており、これまでのような高成長を目指していない。先進国が考える中国の「成長神話」は過大であり、むしろ足もとの数字が実態に追い付いて来た状況と言える。

 それに、本当に危機感が強かったら、政府はリーマンショック直後のように大規模な景気刺激策を行なう必要があるが、まだそうした動きは見られない。

――なぜ、これまでのように高成長を目指す必要がなくなったのだろうか。

 これまで高成長が必要だったのは、国有企業改革によるリストラ、農村からの出稼ぎ労働者の新規雇用などにより、雇用確保が必要だったからだ。試算では、GDPの1%アップによって90万~100万人の雇用が生まれる。つまり、これまで10%成長によって1000万人近くの雇用を創出しようとしてきた。