サブスク経済の最大の怖さは
飽和とインフレ到来時の置き換え

 私は、サブスク経済の最大の怖さはここにあると思います。

 サブスクに使える財布の中身は、どの家庭でも一定の限度があります。そこにインフレ経済がやってくると、財布の中身のチェックが横比較で入ります。至る所で「選定と置き換え」が行われるのです。そこで各サービスは、思わぬ競合相手と戦うことになるのです。

 Netflixがガソリン代や電気代との戦いに敗れて危機を迎えているという話ですが、ひょっとすると他にも競争相手がいたかもしれません。「映画は安価なAmazonのPrime Videoに変更してもいいけれど、ピザとポテトチップスは譲れない」と考えた人もいたでしょう。その場合も、Netflixの真の競争相手はAmazonではなく、ポテチという意外な敵だったはずです。

 日本でもサブスクが飽和する将来においては、セキュリティーソフトにトヨタが敗れたり、サントリーの健康食品のために任天堂を節約する家庭が現れたり、といった経済現象が当たり前になるかもしれません。

 たしかにサブスクというビジネスモデルは便利です。一方で、サブスク飽和時代になると業績の変動要因がより複雑化するという欠点を、今回のNetflixの株価急落事件は示唆しているように感じます。

「本当は、映画のように1作品を見たら1500円という売り切りモデルに世界は回帰すべきなのかな」とビジネスモデルの原点回帰を想起させる出来事でした。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)