ウクライナ危機と脱炭素加速で需給ひっ迫、鉱物資源「枯渇リスク」に備えよPhoto:123RF

ウクライナ危機をきっかけに、あらゆる商品価格が上昇している。各国はエネルギーの脱ロシア化を図り、脱炭素を加速させる狙いだ。これにより、脱炭素に欠かせない鉱物資源の価格が上昇するだけでなく、枯渇するリスクまで出てきそうだ。(マーケット・リスク・アドバイザリー共同代表 新村直弘)

ニッケルの価格暴騰で顕在化した
資源枯渇リスク

 ロシアによるウクライナ侵攻に対し、西側諸国を中心に各国がロシア産エネルギーや鉱物資源の禁輸などの経済制裁を科している。

 とりわけ欧州各国は、エネルギーの脱ロシア依存を急ぎ、さらに脱炭素も加速させようと躍起だ。この結果、脱炭素社会の実現に欠かせない鉱物資源は奪い合いの様相を呈している。

 脱炭素社会の中心を担う電気自動車(EV)に必要なリチウムイオン電池の材料であるニッケルは、ロシアが10%程度の世界供給シェアを占めている。ウクライナ危機が勃発して以降、ロンドン金属取引所(LME)で、ニッケルの価格が一時1トン当たり10万ドルまで急上昇した。

 この価格上昇の要因は、特殊なものだったといわれている。中国ステンレス生産大手の青山控股集団が、鉄とニッケルの合金である「フェロニッケル」の価格下落リスクを回避するためLMEで売りヘッジを行っていた。

 しかし、ロシアに対する経済制裁でニッケル供給が減少するとの見方が強まる中で買い戻しが入り、LMEは取引証拠金を引き上げ、それに対応できずにスクイーズ(玉締め)を受けたことによるものだとされている。

 とはいえ、今回のニッケルの価格暴騰は、その他の金属でも顕著な供給不足が発生し価格が暴騰するリスクをはらんでいることを示したといえよう。