苦しいときほど、「やり直しをためらわない」
会社を辞めようか悩んでいる人は、会社のことを好きかどうか、仕事のことを好きかどうか、考えてみましょう。
苦しいことがあっても、楽しいと感じることもあって、自分と会社や仕事は相性がいいと思えるのなら、そのまま続けてもいいのではないでしょうか。
反対に、楽しいと感じる瞬間がなくなっているようであれば、もう潮時かもしれません。会社や仕事と自分の相性がいい場合には、時間が経てば経つほど慣れていって、愛着がわいてくるものです。
会社にいればいるほどしんどさが募ってくるようであれば、相性が悪いということになります。その場合には思いきって退職し、やり直しを考えてもいいのではないでしょうか。経済的な理由で決断しにくいという人もいるかもしれませんが、そのまま無理をして倒れてしまうよりはましだと思います。
苦しいときには「やり直しをためらわない」ということが大切です。
「会社にしがみつかなくていい」「逃げてもいい」「投げ出してもいい」。そんなふうに考えてみてください。
弱音を吐いてもいい
子どもの頃に大人から「一度始めたことは、最後までがんばりましょう」「途中で弱音を吐かないように」などと言い聞かされて育ってきた人は、会社を辞めることに罪悪感を抱いてしまうかもしれません。
しかし、私は「弱音を吐いてもいい」と思います。道から少しはみ出したくらい、どうということはありません。またやり直せばいいのです。
仕事で悩みを抱えて「しなくていいこと」を考え、実践してみたときに、それだけでは働きづらさが解消されなかった場合には、「この仕事にこだわらなくてもいい」「この会社で働き続けなくてもいい」と考えてみてもいいと思います。
そんなふうに考えて心に余裕を持ち、やり直しをためらわずに進んでいきましょう。
(本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より、同子どものこころの発達医学教室教授。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症スペクトラム学会会長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。2019年、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)に出演し、話題に。著書に『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』(ダイヤモンド社)、『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(以上、SBクリエイティブ)、共著に『最新図解 女性の発達障害サポートブック』(ナツメ社)などがある。