「みんなで暮らしていく」垣根のないカルチャー

──そもそもニュージーランドでは、なぜそうした「垣根のないカルチャー」というか、人々の雰囲気が出来上がっていったのでしょうか。

井田:それにはさまざまな要因があると思います。人口が少ないので、あまり競争的でないというか、ギスギスした感じでないのはひとつ言えますね。

 今は経済的にも発展していますが、私が通い出した30年前は、もっとのんびりした生活をしている人が多かったですし、誰かと競い合って生きていく雰囲気ではありませんでした。

 それだけ自然が豊かだということもありますし、気候も温暖。南島にクライストチャーチという大きな都市があって、緯度にすると日本の旭川くらいなんですけど、そこまで寒くない。冬でも0度を下回ることがなくて、雪もそんなに降りません。それだけ過ごしやすいということですね。

 また、島国で他国から攻められる心配があまりないということもありますし、そういったさまざまな要素が重なって、独特の文化や雰囲気が醸成されているのだと感じます。

 垣根がないという意味では、女性の参政権が世界で最初に認められたのもニュージーランドなんですよ。

 一つの国で、みんなで暮らしていく。そんな共存の意識が自然に培われているんでしょうね。