ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋しながら、毎日1ヵ国ずつ世界の国を紹介する。
コーカサスってどんな地域?
コーカサスはロシア語で発音するとカフカスとなります。ここは、黒海とカスピ海を結んで連なるカフカス山脈の周辺地域で、山脈の南側に3つの独立国アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアがあります。
山脈の北側にはロシアに属する共和国があります。ロシアとイスラーム圏の間にあり、黒海を経て東ヨーロッパにもつながる位置にあります。
カフカス山脈は5000m級の山が連なり、この地域一帯は地殻運動が活発な場所です。
火山活動が活発で地震も多発しますが、一方では石油のほか希少な鉱物資源の産出地でもあります。
また、穏やかな気候のもとで豊かな農業が営まれています。
紛争の背景にある多様な民族集団
小さな地域ですが、実に多様な言語的民族的集団が存在します。例えば、スラブ系の言語を話すロシア人、イラン系のオセチア人、独自の文字を持つアルメニア人、トルコ系のアゼルバイジャン人、カフカス系のジョージア人やチェチェン人が暮らしています。
宗教においては、イスラームスンニ派とシーア派、キリスト教正教とカトリックなどが信仰され、民族や宗教が複雑に入り交じっています。
この地域の国々には、さまざまな大国の支配を受けてきた歴史がありますが、20世紀、旧ソビエト連邦の誕生とともにその構成国となりました。
やがてソ連が崩壊し構成国が独立する前後の頃から、各地で民族紛争が始まっていきますが、その背景の一つには多様で複雑な民族分布があります。
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)