先住民と移民の共存がうまくいっている理由
──ニュージーランドのことをそうやって詳しく聞いたり、考えたりしたことがこれまでなかったのですが、あらためて聞いてみると、非常におもしろいですし、その国や人々にすごく興味が湧いてきますね。
井田:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。ニュージーランドと言えば、ラグビーのオールブラックスが有名ですが、試合前にハカを踊るのはよく知られていますよね。
──それは何度も見たことがあります。オールブラックスの人気のひとつになっていると感じます。
井田:ハカはもともとマオリ族の踊りですが、ニュージーランドには先住民であるマオリと、後にヨーロッパから移住してきた人たちで構成されています。ヨーロッパ系が7割くらいいて、マオリは15%程度の人口を占めています。
もちろんニュージーランドにも民族間の対立や差別問題がないわけではないのですが、多くの人がマオリをリスペクトし、優遇する政策も打ち出していて、お互いの民族が共存していくことに比較的成功している国だとも言えます。
──先住民と移住してきた人たちとの軋轢、差別問題などは世界的にあちこちで見られると思うのですが、なぜニュージーランドではその共存が成功したのですか。
井田:ニュージーランドの人たちは「垣根がない」という話と同じで、そこにはさまざまな要素が絡んできますが、ひとつにはマオリの割合が高かったことが挙げられると思います。
諸外国をみると先住民の割合は数パーセントのことが多いですが、ニュージーランドにマオリは15%ほどいます。それだけの人数がいると、国としても無視するわけにもいきません。
マオリの人が会社を作ったら、そこに補助金を出すなど、社会生活が成り立ちやすいような優遇政策を打ち出しながら、上手に共存を図っているという状態です。
それこそオールブラックスのハカなどは、多くの国民がマオリの文化をリスペクトしている象徴でもあります。
もちろん、ニュージーランドにもさまざまな問題はあるのですが、そうやって一つの国のことでも深く調べたり、現地へ行って、その国の人たちと交流してみると、ただ教科書で学んでいるのとは違った風景が見えてきて楽しいものです。
地理を単なる暗記科目と捉えるのではなく、もっと生き生きとしたものとして楽しく学んでもらえると、私も嬉しいですね。