この“特権”を使って勉強をしたら、実は集中力も向上していてスポーツ時にも生かされるというプラスのサイクルが働きだすのだ。子どもたちにはトップダウンではなく、こういった“気づき”を多く与えるとよい。日本の15~18歳は、先進国の中でも自己肯定感がワーストレベルで低いと伴氏は指摘する。

結果だけで判断すべからず
「理想の行動」に落とし込む

「この世代は小学校とは異なり、社会での自分の立ち位置が見えてきます。周りからどう評価されているか、テストの結果やSNSのいいね数など、自分でコントロールできない“結果”を非常に気にしています。こういった多感な時期だからこそ、周囲の大人は目標設定の本質を見誤ってはいけません。

 スポーツの大会で優勝する、得点を取るといった“結果”の目標を立てただけで終えてしまうと、思うような結果に至らなかったときに、そのチャレンジが失敗のように見えてしまう。大事なのは理想の状態をつくるために、具体的にどうするかの“理想の行動”を見出すことです」

 大事なのは結果ではなく、自らの行動レベルを一段上げるような行動を目標に設定するのだ。周囲の大人は、こういった行動を1つずつ落とし込んであげないといけない。その行動ができたかどうかで判断をする。そういう思考を持っておかないと、子どもは自己肯定感が低いままになってしまう。

「結果はわからないですが、やるべき行動を決めて、それが達成できたかで評価する。こういった肯定感を持てる環境づくりが、この世代には大切なんです。成長の評価基準をしっかり持つ。そう大人が整備してあげることが大事だと思います」

伴 元裕(ばん・もとひろ)/OWN PEAK代表、NPO法人Compassion代表理事、中央大学保健体育研究所所属。東京都大田区出身。商社にて7年間の勤務経験を経た後、アメリカのデンバー大学大学院(スポーツ&パフォーマンス心理学修士)に進学。五輪メダル獲得数最多を誇るTeam USAのメンタルアプローチを学ぶ。帰国後、メンタルトレーナーとして活動を始め、東京五輪では長期に渡り指導をしてきた選手が銀メダルを獲得するなど、プロアスリートやビジネスパーソンの実力発揮を支援している。2019年に、スポーツを通して子どもたちのウェルビーイングを高めることを理念としたNPO法人Compassionを設立。指導者、保護者と共に、子どもたちの運動実施率が高まる三位一体のスポーツ環境づくりを推進している

「NPO法人Compassion代表理事・伴 元裕氏に聞く(4)」に続きます。