長らく続くコロナ禍中での生活。働き方や人間関係の変化で、気持ちが落ち込み気味の人も多いのではないだろうか。2021年4月に発売された『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著 藤田麗子訳)は、「無理せず、自分のペースで自由に生きたい」という人におすすめの1冊だ。著者のクルベウ氏は事業に失敗し、自分を励ますためにSNSに投稿していた癒しの言葉が多くの共感を集め、2015年に作家デビュー。本作はクルベウ氏の日本語初翻訳作品だ。読者からは「1ページ目から涙が出た」「すべての文章が刺さった」「大切な人にプレゼントしたい」との感想が多数寄せられている。『メンタルダウンで地獄を見た元エリート自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』の著者でTwitterフォロワー数13万人超えの人気会社員のわびさんも、本書について「もっと早くに出会いたかった本」と語る。今回は、わびさんに『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』のおすすめポイントについて話を聞いた。
大人になると弱音が吐きづらくなる
――わびさんは『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』について、Twitterでも「仕事や人間関係で辛くなったら、読みたい本。できることなら、昔の苦しんでいた自分に贈りたいな…」とツイートされていましたね。
はい。率直な感想は「もっと早く出会いたかった本」です。
大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしている人は多いと思います。
大丈夫なふりをすることは、時として必要なことでもあります。ただ、ずっと大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしていると、いつかは壊れてしまいます。
大人になると、やさしくしてもらえる機会が減り、寄り添えることや弱音を吐けることが少なくなります。大丈夫なふりから解放されることは難しいです。
そのようななかで、「共感できる本」はひとつの解決策として有効だと思います。
とくに『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』は、やさしい口調で寄り添ってくれる内容なので、自然と心が軽くなります。そして、大丈夫なふりから抜け出すヒントがたくさんあります。
弱い姿を見せられなくて大丈夫なふりをしたことも
――わびさんご自身は、大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしたことはありますか?
社会人になってから10年くらいは、大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをすることが多かったです。当時、自衛官であった私は、弱い姿を見せられない、期待してくれている人をがっかりさせてはいけないと、自分自身に言い聞かせながら、大丈夫なふりをしていました。
拙著の『この世を生き抜く最強の技術』でも書きましたが、激務とパワハラで自分の心と身体が限界に達したときでも、倒れてしまったら二度と立ち上がれないと思い込み、大丈夫なふりを続けました。
その結果、職場で倒れてしまい、休職。普通の生活に戻るまでとても長い時間がかかりました。
あのとき、どうしたら良かったかはわかりませんが、もう少し自分の気持ちに正直になっていたら違った行動につながったかもしれません。
あの頃は自分の気持ちより、他人の評価や世間の価値観ばかり気になっていました。
もし、あのとき他人ではなく、自分を軸に行動していたら、無理して激務やパワハラを我慢することもなかったかもしれませんし、本当に疲れてしまったときにはちゃんと休んでいたと思います。
ネガティブ思考に悩まされたときは、しばらく休むことも大切
――本書の中でとくに印象に残ったエピソードなどありましたか?
「ずっとガマンしてきたあなたへ」は、メンタルダウン直後の自分と重なる気がして、とても印象深かったです。
昔、仕事で激務とパワハラに耐えながら、自分の選んだ道だけを見つめて生きてましたが、結局は心を壊してしまいました。
そのときは、何をしても楽しくないし、まわりの人がメンタルダウンした自分を蔑んでいる気がして、ずっとネガティブな感情を抱えていました。
見るもの聞こえるものすべてからネガティブな感情が生成され、不安になる毎日です。
そんななか、医師の勧めもあって、職場や自宅があるところから離れて実家で療養することになりました。実家で生活していると、しんどい日々を思い出すことが少なくなり、ネガティブな感情が生まれにくくなりました。
「ずっとガマンしてきたあなたへ」に書いてあるように、ネガティブな思考に悩まされているなら、いったん完全に離れて、しばらく休むことは、とても効果的だと思います。
――最後に、『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』はどんな方におすすめでしょうか。
「大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした」というタイトルで、少しでも心が揺れた人におすすめしたいです。
そのような人は、他人に優しすぎる人、仕事をがんばりすぎている人だと思います。逆に言うと、自分の気持ちを大事にすることが苦手な人です。
他人や仕事を優先するあまり、自分の気持ちを遠ざけてしまいがちな人に読んでほしいです。
この本を読めばすべて解決するというわけではありませんが、大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしている人にやさしく寄り添ってくれる本だと思います。
航空業界で働く危機管理屋。
某国立大学卒業後、陸上自衛隊幹部候補生学校に入隊。高射特科大隊で小隊長になり、その後、師団司令部や方面総監部で勤務。入隊後10年間は順風満帆だったが、早朝から深夜までの激務と上司によるパワハラが重なり、メンタルダウン。第一線からの異動を経て、「出世ばかりが人生ではない」「人に認められるためではなく、もっと楽しく生きたい」と思い、市役所に転職。激務だった自衛隊時代に比べると天国のような場所だったが、自らの成長の機会を得るため、転職後1年半で航空業界にキャリアチェンジ。給料は市役所時代の倍に跳ね上がった。自衛隊などの社会人経験で身につけたメンタルコントロール術、仕事や人間関係に対する向き合い方などを中心にツイッターで発信を開始。普通の会社員にもかかわらず、開始して2年でフォロワー数が8万人を突破。ツイートはネットニュースなどにも取り上げられ、人気を博している。2022年4月現在、Twitterフォロワーは13万人。『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』が初の著書。Twitter:@Japanese_hare(イラスト:死後くん)