わかりやすく説明しましょう。経済を動かす人たちは、過去に戦争が起きた際、株価がどのように反応したかを調べています。似たようなことが将来起きるだろうと推論するわけです。

 第2次世界大戦後の主な戦争(勃発日)とその3カ月後の株価の変化率を見るとよくわかります(図表参照)。株価は米国のものを用いています。例えば、第1次中東戦争の勃発日から3カ月後、米国の株価は4.1%下落しました。

 主な戦争は全部で11回ありました。開戦3カ月後、株価が上昇したケースが6回、下落したケースが5回で、平均変化率はマイナス1.0%でした。

ウクライナ問題で世界経済はどうなるのでしょうか?佐藤隆太郎(さとう・りゅうたろう)
2000年生まれ。京都大学経済学部経済経営学科3回生。高校時代に塾の恩師からの勧めで投資に興味を持つ。大学に入学してから『伝説のファンドマネージャーが教える株の公式』を読み、明確かつ洗練された投資のルールに衝撃を受ける。林氏を師と仰ぎ、投資初心者の立場から「林則行さんファンクラブ」を立ち上げ、会員をはじめ、ひとりでも多くの人を経済危機から守るための活動を行っている。

佐藤 上昇数・下落数も似たようなものだし、平均値は大きなプラスやマイナスもないですよね。戦争で株価が上がるときもあるし、下がるときもあるということになります。それでは何もわからないではないでしょうか?

 「何もわからない」と結論づけてもいいですが、「戦争自体は株価には特段の影響はない」ととらえるべきでしょう。株価は景気や経済のバロメーターですから、株価に特段の影響がない以上、景気、経済にも影響がないことになります。株価や景気、経済を動かす要因はほかにあるということです。このことをぼくは投資家としての長年の経験で学びました。

佐藤 では、株価や景気、経済は何によって動くと考えたらいいのでしょうか?

 話を絞りましょう。投資家にとって当面最も大事なことは、世界の株価が天井を打って大きく下がる軌道に入るか否かです。それを判断するのに、戦争は一切考慮しなくてよい。

 では、何が大事なのか?「株価の天井は物価の上昇が引き金となる」ということです。このルールさえ押さえておけば、株価の動きの8割方は説明できる。あとの2割は忘れてしまえばいい。

佐藤 ウクライナ問題によって、ロシアやウクライナからの物資の輸入に支障が起きれば、物価が上がります。一方、戦争によって消費者心理が冷え込むとしたら、物価は逆に下がり気味になります。いったいどちらが正しいのかと考えなくていい、ということですね。

 注目するのは、物価指数の上昇率(前年同月比)までで十分です。

 それがどのような理由で上昇(下落)したのかについてまで、気を回すのはやめようということです。

 飢饉、疫病、自然災害など世界にはさまざまな出来事が起きます。それらの物価への影響度をひとつひとつ考えていたら、迷路にはまり込んでしまい、「木を見て森を見ない」ことになりかねません。