酒造メーカーのトップと思ってもらうためには
ビール事業がしっかりと自立しなければならない

関灘氏Photo by Teppei Hori

関灘 そうした経営の根幹が受け継がれつつ、酒類、飲料、健康食品など多岐にわたる商品カテゴリーそれぞれで、愛されるブランドがあり、市場シェア1位のブランドを築かれるなど進出される領域で次々と実績を残されています。

 一方、市場シェア3位にとどまりながらも挑戦を続けられているビール事業は、どのような理想や夢を持って始められた事業なのでしょうか。また、グループ全体にとってビール事業はどのような意味合いを持つものなのでしょうか。

鳥井 グループ全体にとってビール事業は、「元気印」でなければならないし、「やってみなはれ」の精神の体現そのものです。

 今もお客さまは、お酒を飲んだ量が話題に出るとき、「今日はビールを何本飲んだ」と、ビールの瓶や缶の本数で換算している。「何円分飲んだ」と言うことはないでしょう。ある意味ビールは、それくらい日本人にとって身近なお酒なのです。

 ウイスキーでいくらシェア1位であっても、金額やアルコール度数で換算した場合のシェアが高くても、ビール事業でトップ2に入らなければ、酒造メーカーのトップだとは思ってはもらえません。それほど重要な事業です。

関灘 ビール事業でトップ2に入らなければ、たとえ他のカテゴリーで大きな存在感を放っていても、お客さまがサントリーを酒造メーカーとして認識してくれない、という強い危機意識があるのですね。

鳥井氏Photo by Teppei Hori

鳥井 サントリーは、サントリー美術館もサントリーホールもあるし、サステナビリティにも積極的に取り組んでいる。決して悪い印象はないと、ありがたいことに、お客さまにはそのようなところを評価していただいているかもしれません。

 ただ、酒造メーカーとして、本当に圧倒的にお客さまに愛され、認められるには、ビール事業がしっかりと自立しなければならないのです。

関灘 シェア1位や2位の事業だけに注力するのではなく、3位のビール事業をグループ一丸となって応援し、逆転をめざすというプロセスが、「やってみなはれ」の体現であり、これに取り組む求心力が、サントリーグループの力ということですね。

 ビール事業は、これから夏にかけて最盛期を迎えると思いますが、どのような新しい価値の創造に挑戦されるのでしょうか。これからの展望はいかがでしょうか。

鳥井 プログラムは十分にそろっています。長期でしっかり計画してきて、この2年くらいはコロナ禍の影響もありましたが、コロナ禍の前までは酒類の事業トータルとしては比較的うまくいっていただけに、危機感が薄れているところがある。健全な危機感をもって臨まなくてはならない。

 現場を含めわれわれ全員が、まだまだ3位のメーカーだという謙虚な気持ちで挑戦していく姿勢を持っていれば、計画通りに事が運ぶと考えています。

関灘 挑戦する姿勢で、プログラムもそろっている。十分に期待できるということですね。これからのビール事業の挑戦が楽しみです。

(対談・後編へと続く)