willよりもcanを重視、そしてご機嫌状態で変化対応ができる
前田:多くの起業家、もちろん僕もwillを一番大事にしますが、採用のときはwillに紐づくカルチャー採用と同等、時にはそれ以上に、スキルがマッチすることを重視します。
戦闘力が高いか低いかで採用の可否を決めることや、向いているか向いていないかで採用するかしないかを決めるのは、その瞬間にその人のことを否定してしまう感覚が否めません。一方、いわゆるカルチャー採用であれば「カルチャーや考え方マッチするからまず採用しよう、能力はウチの会社に入ってゆっくり育てばいいね」という考え方で、採用する側の精神負担も低めだと思います。
しかし、ドラゴンボールにたとえてしまって恐縮なのですが、僕は、相手に通用する技を持たないキャラを戦場に連れていくことには戸惑います。いくらヤムチャがいいヤツでも、足手まといになるかも、と思ったら、置いていきます。クリリンも最初弱かったかもしれませんが、最終的には飛び道具を覚えるので、連れていくでしょう。
平尾:ドラゴンボール世代なので、分かりやすいです(笑)。
前田:ところが、「ヤムチャを採用しよう」という流れが生まれると、ちょっとやっかいです。仕事は戦場ですから、Willだけじゃ厳しくて、一緒に戦うなら、Canも欲しいですよね。
平尾:willとcanは両方必要ですね。
前田:もちろん最初からCanがずば抜けている必要はなくて、その素養の片鱗が見えればOKだと思います。クリリンのように、だんだん自分が弱いことに気づき、戦闘力を上げて、気円斬を覚えて。こういう人材は良いですよね。
平尾:面白いですね。
前田:人が戦って覇権を争っていた戦国時代が、現代はビジネスというフォーマットに変わっただけで、基本的には戦場であることに変わりはないと思っています。つまり、ビジネスの現場には、かめはめ波が飛び交っているということですね。
平尾:なるほど。
前田:その前提で言うと、さっさと能力を身につけることが大切ですよね。物凄くシンプルな構造として、人は、人から褒められるとやる気になる。これはもう何百年、何千年と変わってないんじゃないでしょうか。「自分ってやれるぞ」という自己効力感や、自分が誰かに必要とされているという自己存在感も引き上がります。こうなると、フロー、ご機嫌状態に入りやすくなっていきます。このフローと、元々の戦闘能力が備わっていれば、だいたいの変化には対応できると思います。
だから、「誰より機嫌よくいること」も、経営者の大切な仕事なのかもしれませんね。
そうすれば、周りにもご機嫌が伝播していきます。
平尾:それはすごく大事ですね。
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