ラ・フランスも別解によって生まれた説

――あっという間にお時間になってしまいました。最後に何かあれば。

前田:丈さんの本は「別解力」がキーワードになっていると思うんですが、僕は「別解力」というワードを聞いてラ・フランスを思い出しました。

ラ・フランスは、もともとラ・フランスという名前ではなかったという説があります。「みだくなし」と呼ばれていた、と。「見るに耐えない」という意味だそうですが、山形県の方言で「みだぐなす」と発音していたそうです。

平尾:そんな名前の由来だったんですね。

前田:「みだくなし」をラ・フランスと呼んだことによって、単価が高くてもOKという空気感を見事に醸成したと思います。なんとなく今でも、ラ・フランスってフランスから来ているものという気がするじゃないですか。でも実は、ラ・フランスは現状、8割以上が山形県で生産されているもので、フランスではもう100年以上前に生産しなくなっていると言います。それなのに、僕たちはなぜかフランスのものだと思っている。まさに、このままでは売れないから「別のやり方」にずらしたことがうまくいった事例です。

ラ・フランスは、そもそも美味しくて、優れています。単価が高くても買いたい気持ちになるし、利益率を担保しやすい。そして、もともと「みだくなし」と呼ばれていたものを、名前まで変えてしまった、というところから、別のやり方でもあります。

さらに、山形の観光協会の気持ちに立つと、自分らしいやり方ですよね。フランスでラ・フランスが作れなくなったのは、フランスの気候では育たないからだそうです。これに対して山形はラ・フランスにとってちょうどいい湿度と気温で、ラ・フランスを育てるには絶好の場所らしく、だから山形らしさを存分に出せる商品なんですよ。

別解力という言葉って、パッと聞いてとても分かりやすいんですが、逆に想像力ある読者の人は、「こういうことでしょ」って思ってしまうかもしれません。

なので、別解力というタイトルをさらに広げる観点に立つと、別解力をわかりやすく言い換えた丈さんならではのワードを生み出すと、さらに広がりが出てくるかもしれないですね。

それこそ、別解力は抽象化すると、要は「ラ・フランス」がやったことと同じなので、丈さんが「最近『ラ・フランス法』っていうのがあって」と言ったら、気になって皆さんリンクをクリックするかもしれません(笑)

本当にこんなに素晴らしい本は絶対に売れたほうがいいし、それによって世界がより良くなると思います。そのために何をやればいいかを考えた時に、根本のキーワードとなる別解力という言葉を、丈さんらしいセンスで、またいくつかの違う言葉で表現してみたら面白いかもしれませんね。

平尾:貴重なアドバイスまでいただき、ありがとうございました。

前田:とんでもないことです。この別解力のベン図がビジネス界に広まっていくべく、微力ながら僕も社内外話してみます! 貴重なお時間ありがとうございました。

自分らしさは「ホッチキス」くらい些細なものでいい