制約条件を変えていこう(Managing Threat/Transforming)
ESG/SDGs経営の取り組みを進めていくうえで重要な考え方として、「制約条件を自ら変える」というものがあります。新しい取り組みを進めていくうえで、どうしても現れる障害(例:インフラの未整備や、規制/政策の存在等)に対して、それを所与のものとして考えるのではなく、自ら関与し制約条件の変更を試みることも重要です。
たとえば、データセンターのカーボンニュートラル化を進めるうえで、グローバルで再生可能エネルギーの調達に迫られたグーグルは、それまで再生可能エネルギーを調達するためのインフラがなかった台湾において、自ら政府に法整備を働きかけ、それを受けて台湾の立法府が電力法を改正し、電力事業者からの再生可能エネルギーの直接購入を実現しました。
ESG/SDGs経営を進めるうえで、自社を取り巻く制約を所与のものとして考えるのではなく、自ら制約条件を変えるよう外部環境に働きかける視点も重要でしょう。
自社のESG/SDGs経営の取り組み推進にとって、制約条件とは何か、その制約条件は自らの働きかけによって突破することはできないのか、社内で議論を深めてみましょう。
仲間を作って、助け合おう(Managing Threat/Transforming)
ESG/SDGs経営の推進に向けては、志を同じくする仲間を作る視点も重要です。また、自社を取り巻く制約条件を変えるために、同様の課題を抱えている企業と連携するという考え方もよく見られます。
たとえば、先ほどのグーグルの事例では、再生可能エネルギーの購入を自社単独ではなく、購入者同士でのアライアンス(Renewable Energy BuyersAlliance ※ 2021年11月にClean Energy Buyers Allianceに改組)を構築し、共同で電力事業者や自治体に働きかける仕組みを構築しています。また、自社のESG/SDGs経営を客観的に評価するため、経営陣の主導による有識者を招いたアドバイザリー・ボードの設置や議論も重要でしょう。
たとえば、シーメンスでは、アカデミア・産業界から幅広く有識者を招き、シーメンス・アドバイザリー・ボードとして、経営陣自らサステナビリティに関する議論を年に数回集中して行っています。
加えて、社内に有識者を招くだけではなく、自ら積極的に経営幹部が外部の研究会等に自社の視点を提供し、自社のESG/SDGs経営に向けて仲間を増やしていくことも重要です。
さらには、自社だけではなくサプライチェーン全体の脱炭素や人権対応などサステナビリティ・マネジメントの体制構築が求められるなか、関連するステークホルダーを特定し、議論を積み重ね、ステークホルダー全体を巻き込んだESG/SDGs経営を進めていくことも重要でしょう。
たとえば、ボッシュでは、サプライチェーン全体でのサステナビリティ・マネジメントの構築に向け、顧客・サプライヤー・大学をはじめとした研究機関、政策担当者などと議論を重ね、業界全体のベンチマーク調査を実施し、「New Dimensions-Sustainability 2025」と呼ばれる全社イニシアティブのKPIを設定しています。
本記事は『SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略』より本文の一部を抜粋、再編集しています。