「宅建士」資格を取得するメリット

──棚田さんは、YouTubeで主に「宅建士」の資格試験勉強法について発信されていますよね。9つの中でも「宅建士」にフォーカスしているのは、どのような経緯なのでしょう。

棚田:もちろん、私自身が不動産業をしていて一番身近な資格だから、というのはありますが、一番は、勉強しさえすれば誰でも合格できる国家資格だからですね。

宅建士は、学歴やそれまでの仕事は関係なく、初心者でも学習のやり方がわかれば独学でも合格できて、かつ、年収アップ・キャリアアップにもつながりやすい資格なんです。2020年度の試験では合格率17.6%と、もちろん多少勉強した程度で合格できるような資格ではありませんが、行政書士ほどの高難易度ではない。私は「勉強が苦手な人のための資格試験勉強法」をコンセプトに発信しているため、宅建は最初のハードルとしてちょうどいい、というのも理由の一つです。

──宅建士を取得したメリットとしては、どんなものがありますか。

棚田:たくさんありますが、一番わかりやすいところで言えば、年収ですね。サラリーマン時代の話ですが、当時の年収ベースで30万円アップしました。資格手当の金額は会社によって異なりますが、例えば毎月2万5000円、年間で30万円の手当が出る会社も珍しくありません。

不動産会社で給料を上げようと思ったら、資格を取る以外には営業成績で目立つくらいしかありませんから、営業が苦手な人は絶対にとっておくべきです。

──できる仕事にも変化がありましたか?

棚田:あとは、「重要事項説明書に記名押印して説明ができる」も大きなメリットですね。重要事項説明書とは、不動産取引において、物件内容や取引条件などの重要事項が記載された書類のこと。不動産会社で働いていない人はわからないかもしれませんが、「重要事項説明書に記名押印して説明ができる」は1つのステータスなんです。

宅建を持っていない営業は、宅建を持っている人にわざわざお願いしてやってもらわなければなりません。スケジュール調整が必要だったり、その人になんとなく頭が上がらなくなったりと、ストレスになります。出世にも影響するかもしれません。持っていれば一連の仕事を自己完結できるので人の手を借りる必要がなく、仕事がスムーズに運ぶようになります。

高齢化が進む宅建士、今からでも遅くない?

──宅建士の人数は他の国家資格に比べても多いため、今さら受けても需要がないのでは……という懸念もあります。棚田さんはどうお考えですか。

棚田:私は、今からでも挑戦する価値は充分あると思いますよ。宅建士は、高齢化がどんどん進んでいますし。

──えっ! そうなんですか?

棚田:宅建士証の交付を受けているのは約53万人(2021年3月31日現在)。そのうち最も多くを占めるのは40代で、およそ25%です。50代、60代も多く、そして70歳以上も約13%と、全体的に年齢層がかなり高め。逆に、20代で交付を受けた宅建士は、わずか6%弱。若い宅建士は希少価値がものすごく高い状況です。

今後会社を継続させていくために、若い世代の宅建士を雇って経験を積ませ、企業全体に刺激を与えていってほしいと考える経営者は多いはず。宅建士の高齢化が進んでいるからこそ、今後、バリバリ働ける現役世代の宅建士の需要は十分見込めるのではないか、というのが私の見解です。

──そう言われてみるとたしかに、今からでも資格を取得しておけば、強い武器になりそうですね。

棚田:基本的には、資格は自分の目的に合ったものをとるのが一番だと思います。私の場合は不動産に関連した資格が多いですが、人それぞれ、今後自分が働いていきたい業界とマッチする資格があるはず。どんな資格を持っていると、より説得力を持たせられるのか? 信頼してもらえるのか? と考え、調べたうえで一番合っている資格を選べるといいと思います。

ただ一つ言えるのは、終身雇用制度が崩壊したこの時代、会社が守ってくれる保証はどこにもない、ということです。「身を粉にして働き、会社に尽くしてきた経験」があっても、それだけでよりよいキャリアを築けるとはかぎりません。知識やスキルを持っていても、証明するものがなければ信頼をしてもらえない。せっかく学歴がなくても勉強が苦手でも、誰でも学習しさえすれば取得できる資格があるのなら、挑戦して損はないと私は思います。

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