「リクルーティング」が9割

星:このように、スタンフォードなどのトップチームに入る人たちは、体力やアメフトの素養も持っているけれど、学習面でも多彩な才能を持っています。

 それを見つけてくるのも、河田さんの仕事の一部なのですよね

河田:はい。僕はアシスタントコーチなので、直接採用には関わりませんが、いい選手を見つけたら上司たちに推薦し、その生徒が対象になりそうか、「サポート」をします。

星:では、成績を見て、あまりにも成績表がよくなかったら難しいし、可能性があるならその生徒のサポートをしていくと。

河田:はい。そこから我々の全精力を注入し、その子がどうやったら受かるのかをサポートします。たとえば、

「こういうAP(Advanced Placement)をとったほうがいい」
「このセメスター(学期)でCがあったら絶対ダメ」

 などと助言します。

 日本のスポーツ指導者に「どうやったらチームが強くなるのか」と聞くと、みんな一所懸命、マネジメント論や技術論の話に終始しがちです。

 一方、アメリカのスポーツチーム関係者に聞くと、99%が「リクルーティングだ」と言います。

「最初からできるヤツをとることが一番いい」と。

 スポーツ以外でも、アメリカの企業が日本でオフィスをつくるとき、金に糸目をつけずに、とにかくよい人材をとれ、となります。

 スタンフォード大学では、独自の「OKD(Our Kind of Guy)」という基準があり、リクルーティングの最初に、「この人はOKDか」、つまり、「スタンフォードらしい子か」が確認されます。

 本人がスポーツも勉強も一所懸命やっているか。

 かつ情熱を持ってやっているか。

 もしくは、親・兄弟が情熱を持ってやっているかが重視されます。

 たとえば、兄がハーバードに通っていたら、プラス評価されます。

 要するに、本人だけではなく、家族全体も含めて、スポーツだけでなく勉強にも情熱があるのかという部分を総合的に評価するのです。

星:なるほど。他にはどんな基準がありますか?

河田:スタンフォードに入るは勉強ができるだけでは難しいんです。

 スタンフォード大学は一学年1600人。

 そこに4万~5万人の出願がある。

つまり天文学的な競争率です。

となると、出願者はほとんどのGPA(高校での成績評価スコア)が4.0満点です。日本でいう偏差値は、80以上といわれています。

 たとえば、ボランティア活動、課外活動、各種プロジェクトへの参加など、みんながやっていないことをやっているということが重要視されます。

 スポーツもその一つです。

 このように、何か+α、+α+βがないと、入るのがとても難しいのが、スタンフォード大学なのです。