自分の仕事は誰かをハッピーにしているか

平尾:私が普段会う方も、NPO、NGOの方、教育者の方が増えてきました。会社が上場したこともあるかもしれませんが、時代としてブレンデッドバリューになってきていることは、ここ10年でとくに実感します。それはソーシャルアントレプレナーの活躍、CSVやESGの認識など、世の中のエコシステムが地球にとってどうするべきなのかという観点に立たざるを得なくなってきたからでしょう。

 欧米の投資家とお会いすると、ガバナンスはもちろんEとSに対してのご質問をたくさんいただきます。我々はIT起業ですが、環境に対してどう対応しているのかも問われるのです。

 もともと事業で社会のためにやっているつもりですが、それでは全然足りない。できることを起業家としてもっと考えなさいと言われることで、社会との交わりも感じています。もはや利益追求のみでやっていける世の中ではないですし、それが本来の正解だと私も思っています。

 ひとりの個人として見たときに、肩書きが意味を持たない「個」の時代になってきていると思うので、起業家なのか社会起業家なのかということは、自分がやっていることがどのぐらいの人にとってハッピーなものにつながるかということでしかありません。そこにこそ、誰もが頭を使っていく必要があるのでしょうね。

 起業家の定義は、自分の頭で考え、自分で選択し、自ら動ける人です。そんな人たちを増やしたいと思って本を書きました。この本で起業家の能力を民主化したいと思ったのも、それが理由です。そういう人が増えれば、世の中はもっと良くなるのではないか。自戒を込めてそう思います。私も頑張らなければいけません。今日は非常に勉強になりました。ありがとうございました。

利益だけを追求してもダメな時代に「自分の頭で考え、動く」ために必要なこと