スポーツ指導者が抱える
孤独解決の糸口

 現代のスポーツ指導者は、学ぶべきことが多い。指導するスポーツの専門知識はもちろん、マネジメントやメンタルヘルスケアに関する知識も必須だ。さらにグローバル化が進展したことにより、スポーツの指導においても異文化・多文化への理解は欠かせない。求められる能力が複雑化しているのは、企業のリーダーや管理職にも通ずるものがある。

 複雑化が進む社会の中で、資格取得によって専門知識を体系的に習得することは、指導者にとっても選手にとってもメリットが大きいだろう。

 ただしスポーツ指導者が知識の習得を積み重ねても、その努力がチームの成長という結果につながるとは限らない。トライアンドエラーの中では、学習から得た知識や自身の経験では対応できない課題も見つかるからだ。

 こうしたジレンマを抱えるスポーツ指導者のために、悩みをヒアリングする機会がもっと必要ではないだろうか。

 たとえば前述のJSPOでは、公認スポーツ指導者全国研修会を実施している。研修会では、選手とのコミュニケーションスキルや指導に求められる人間力、スポーツ指導における環境変化などをテーマとし、座談会やワークショップを開催。それぞれの指導者の知見や悩みを共有する場となっている。

 これからも進化するであろうスポーツ業界において、指導者の孤立を回避する視点も必要になるはずだ。健全なスポーツ推進のためにも、指導者が抱える悩みをフォローする環境づくりに期待したい。

【参考書籍】

『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』(中竹竜二著、ダイヤモンド社)