痩せたい、熟睡したい、賢くなりたい、ストレスに強くなりたい…。人類の生活環境が激変するなかで、現代人はかつてなく多様な悩みを抱えるようになった。本連載では、全米で話題沸騰中、国内では本年3月に発売された書籍『EAT 最高の脳と身体をつくる食事の技術』の内容から、“食に関する最新の知見”にもとづく有益な情報をお伝えしていく。
「生まれ持ったもの」とうまくやっていく
脳細胞は体内のほかの細胞と違い、簡単には別のものに置き換わらないという特異な性質がある。
脳細胞のほとんどは、私たちが子宮にいるあいだに形成される。生を受けてこの世界に挨拶した後も、幼少期に新しい神経細胞が生まれ続ける脳の部位もあるが、それが終わったら、脳細胞の産生はピタリと止まる。
そのため、脳細胞のケアはとりわけ重要で、人生で絶対に欠かせないことのひとつとなる。決まった数の脳細胞を携えてこの世に生まれたら、その後は、それらと一緒にやっていくしかないのだ。
自分の脳細胞の手入れをし、脳の衛生状態を保てば、生涯にわたって認知機能を活性化し、(神経可塑性を通じて)新たな結合を生み出すことができる。
そこで、脳細胞の健康をサポートする食品を紹介しよう。これらを飲食すれば、人生のあらゆる分野での活動の質を高めることにつながる。
ホウレン草
ラッシュ大学医療センターの調査から、ホウレン草などの葉物野菜を一日あたり約2食分[調理したものなら1カップ、生なら2カップ]食べると、記憶障害や認知の低下を実感することが少ないとわかった。
めったに葉物野菜を食べない人と比較して、一日に2食分の葉物野菜を食べた人の脳は、約11歳若返ったような働きを見せたという!
この実験で葉物野菜を毎日食べた人々は、認知機能の評価のために行う一連の年次検査を複数年受けた。その検査では、エピソード記憶、ワーキングメモリ、視空間認知能力をはじめとするさまざまな認知機能が試された。
各種ライフスタイル要因も考慮に入れて検証した結果、葉物野菜の摂取は脳を活性化する要因として明らかに際立っていた。
これからは、ホウレン草やケール、各種レタスなどの葉物野菜を、一日に2食分摂ることを目指すといい。この量なら、サラダやスムージーで簡単に食べられる。
または、脳の健康にいい脂肪と上質な塩、そして次に取り上げるニンニクと一緒にソテーしてもいい。
ニンニク
ニンニクの効能はこの10年で1000件以上の科学文献に引用されているが、その活用の始まりは古代エジプトにさかのぼる。
古代エジプト人のあいだで、食用や薬に重宝されていたのだ。ニンニクの効能は身体全体に及び、神経細胞も例外ではない。
科学ジャーナル『ドラッグ&ケミカル・トキシコロジー』に掲載された研究によると、ニンニクは記憶と学習のスピードを向上させうるとわかった。
脳細胞が毒素に暴露していたとしても、その効果は変わらないという。別の研究からは、ニンニクには神経保護作用があり、アミロイド斑の形成、毒素、早期死滅から脳細胞を守ると判明している。
ニンニクを薄くスライス、またはみじん切りにしたものをワカモレディップに加え、それを茹でた野菜にたっぷりとかけて食べてもいいし、鶏肉料理や魚介料理にニンニクを加えるだけで、料理の味わいが増す。
チョコレート
チョコレートほど、脳を動かし興奮させる食べ物はない。『ニューロサイエンス&バイオビヘイビアル・レビューズ』に目をみはるデータが掲載されていた。
ダークチョコレートに含まれるフラボノイドが、学習と記憶に関係する脳の領域、とりわけ海馬に入り込んで蓄積されうることが実証されたのだ。
『ザ・ジャーナル・オブ・ニュートリション』に近年掲載された研究によると、上質なチョコレートを毎日約9グラム以上食べると、加齢に伴う記憶力の低下から脳を守る効果が期待できるという。
板チョコでなくても、大さじ1杯のカカオニブをヨーグルトやオートミール、スムージーに加えてもいい。それから、チョコレートについて何度も言及されている特徴には、気分を明るくする作用もあげられる(言わずもがなだろう)。
その作用が起こるのは、脳への血流が改善され、ニューロジェネシスの活性化が促進されることが一因にある。
チョコレートは本当に、新たな脳細胞の産生に拍車をかけてくれる希少な食べ物だ!