40代ともなると、男女ともに忍び寄ってくる問題がある。それは“尿もれ問題”である。しっかりと膀胱から尿を排出したはずなのに、ズボンをもとに戻してあるき出した途端、尿もれが生じて股間部分を汚してしまうことも……。さらに高年齢になると“便もれ問題”も発生する。けっして笑えない人間の尊厳にさえかかわる深刻な問題なのだ。
そこで参考にしたいのが、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)、『金スマ』(TBS系)、『体が硬い人のための柔軟講座』(NHK)などで話題のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、中高年はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも体が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、尿もれ・便もれ問題を根本から解説して問題解決法を紹介する。
(監修:田畑クリニック院長 田畑尚吾 医師)
「骨盤底筋群」を鍛えて尿もれ・便もれを防ぐ
「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーほか、数々のオリンピック出場者を指導する。2014年からは青山学院大学駅伝
チームのフィジカル強化も担当。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。著書は『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)など多数。
【前回】からの続き
自分の意思とは無関係に働く「不随意筋」を鍛えるのは事実上困難ですが、自分の意思で動かせる「随意筋」(尿道括約筋・外肛門括約筋)は筋トレで鍛えられます。すると、尿もれや便もれの予防につながるのです。
自分の意思で動かせる随意筋の尿道括約筋と外肛門括約筋は、「骨盤底筋群」と呼ばれる筋肉グループの仲間です。「骨盤」は、膀胱や直腸、女性では子宮などの内臓を入れた深い器のようなものです。
その底には、骨盤内の臓器が落ちないように、ハンモック状に支えている小さな筋肉のグループがあります。それが骨盤底筋群です。骨盤底筋群には、この他にも、「肛門挙筋」「尾骨筋」「坐骨海綿体筋」「会陰横筋」などがあります。
これらの筋肉はいずれも自分の意思で動かせる随意筋で、排尿や排便のときには同じく随意筋である尿道括約筋と外肛門括約筋と一緒になって働いています。
おならをガマンするような感じの筋トレ
骨盤底筋群の衰えによる尿もれや便もれは、専門的には「腹圧性失禁」といいます。腹圧とは、お腹で内臓を収めている「腹腔」という袋にかかっている圧力です。
腹圧は、咳やくしゃみをしたり、急に立ち上がったりしたときなど、お腹に力が入ったときに高まります。
高い腹圧がかかると膀胱と尿道、直腸にも高いプレッシャーが加わります。骨盤底筋群が弱っていると、このプレッシャーに負けて尿失禁や便失禁を引き起こす腹圧性失禁に見舞われるのです。
腹圧性失禁を避けるためには、次の骨盤底筋群を強化する筋トレが効果的です。肛門を締めるときに大切なのは、おならをガマンするような感じですることです。
一度コツをつかめば、気軽にエクササイズできる
外肛門括約筋は体の内側に向けて、引き上げられるように収縮する特徴があります。ですから、おならをガマンするように、肛門を締めながらお腹のなかに引き込むような自覚を持つと、外肛門括約筋が鍛えられやすいのです。
お尻の筋肉を動かさないようにするのもコツです。お尻の「大臀筋」は大きな筋肉なので、ここが先に動いてしまうと、小さな筋肉グループである骨盤底筋群はうまく動けなくなります。お尻の大きな筋肉を使わず、骨盤底筋群だけを鍛えるように意識しましょう。
以上のようなコツさえつかめたら、通勤電車で立っているときも、オフィスで座って仕事をしているときも、自宅でテレビやネット動画を観ているときも、骨盤底筋群は鍛えられます!
40歳以上の多くが抱える悩み
尿もれには急にオシッコがしたくなり、我慢できずに漏れる「切迫性尿失禁」と呼ばれるタイプもあります。病気がないのに、トイレが近い(頻尿)、トイレを我慢するのが大変(尿意切迫感)、切迫性失禁がある場合、多くは膀胱が意思に反して勝手に収縮する「過活動膀胱」によるものです。
40歳以上の8人に1人が悩んでいると推定されます。もし疑われるようなら泌尿器科を受診して治療してください。
※本稿は、『10年後、後悔しない体のつくり方』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、他にも体が若返る方法がたくさん掲載されています。