一つの財務指標に焦点を当て、知っているようで意外と知らない企業間の序列をお伝えする本ランキング企画。今回は、損益計算書(PL)の中で本業でどれだけ稼いだかを示す「営業利益」を取り上げ、全上場企業(金融業を除く)を対象にランキングを作成しました。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
営業利益が大きい会社ランキング
トップはトヨタ「3兆円」
早速ランキングを上位から見てみましょう。
決算期(通期)は2021年5月期〜22年4月期。対象企業は金融業を除く全上場企業。決算月数が12カ月ではない変則決算の企業、営業利益(またはそれに準ずる会計指標)の開示がない企業は除外した。通期決算の発表を延期した企業も含まれない可能性がある。順位は小数点以下を加味。
NTT、KDDI、ソフトバンクの
通信3社がトップ5の過半数を占拠
1位はトヨタ自動車。営業利益は2兆9957億円と3兆円に迫る金額を稼ぎ出し、2位に1兆円以上の差を付けました。本連載で取り上げた『売上高が大きい会社ランキング2022【1000社完全版】』と同様に、他社を圧倒する断トツの結果です。
続く2位はNTTで営業利益は1兆7686億円でした。ここでトップ5を見渡してみると、4位にKDDI(営業利益1兆0606億円)、5位にソフトバンク(同9857億円)と、ランキング上位5社のうち3社を通信大手が占めていることが分かります。
携帯電話の通信料金において「官製値下げ」を強いられ、21年2〜3月に「ahamo(アハモ)」「povo(ポヴォ)」「LINEMO(ラインモ)」といった格安プランの提供を始めた通信3社。業績に悪影響を与えることが予想されましたが、3社合計で3.8兆円もの営業利益をたたき出しました。
携帯料金の「官製値下げ」は菅義偉前首相の肝いり政策でしたが、その論拠の一つが通信3社の「稼ぎ過ぎ批判」でした。菅前首相は、携帯料金値下げ政策について振り返ったダイヤモンド・オンラインのインタビュー記事『菅前首相が明かす「携帯4割値下げ」の攻防、キャリア3社に突き付けた“正論”』の中で、次のように言及しています。
「例えば携帯各社の18年3月期の連結営業利益は、ソフトバンクグループ、NTTドコモ、KDDIの3社の合計で約3兆円に達していました。日本企業のランキングでは、3位ソフトバンクグループ、4位NTTドコモ、5位がKDDI。ちなみに、1位はトヨタ自動車ですが、2位はNTTドコモの親会社であるNTTです」
「営業利益率も、全業種の平均利益率は6%(上場企業平均は7%弱)の状況で、携帯3社は20%もありました。携帯電話事業は、通信網の整備など参入障壁は高く、大手3社のシェアは9割超で顧客を奪い合う価格競争が起きにくかったのです。公共の電波を使わせてもらっているという意識が希薄だったのではないでしょうか」
NTT、KDDI、ソフトバンクら3社の営業努力の影響はあるでしょうし、企業が利益の最大化を目指すのは当然です。また、この営業利益には携帯事業以外の利益も含まれています。ただ、菅政権時代と同じロジックで攻め込まれたら、「まだまだ値下げの余地はある」と迫られそうな利益水準です。
なお、菅前首相が言及した18年3月期と今回の対象決算期(通信3社は全て22年3月期)では、やや状況が異なっています。
まず、5位のソフトバンクですが、これは持ち株会社のソフトバンクグループではなく、通信事業をになるその中核子会社です。ちなみに、ソフトバンクグループは連結決算での営業利益の開示がないためランキングの対象外となっています(総合商社の三菱商事や三井物産、住友商事なども同じ理由で対象外)。
また、NTTの完全子会社となってNTTドコモが上場廃止になったので、NTTドコモもランキングの対象外となりました。
本ランキングの【全1000社完全版】では、6位以降を含めた全1000社の営業利益ランキングを公開しています。営業利益6000億円から50億円弱まで、幅広い企業の序列を網羅しました。ぜひそちらも併せてご覧ください。