一冊の「お金」の本が世界的に注目を集めている。『The Psychology of Money(サイコロジー・オブ・マネー)』だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムニストも務めた金融のプロが、ビジネス、投資、資産形成、経済的自立のために知っておくべき教訓を「人間心理」の側面から教える、これまでにない一冊である。世界43ヵ国で刊行され、世界的ベストセラーとなった本書には、「ここ数年で最高かつ、もっとも独創的なお金の本」と高評価が集まり、Amazon.comでもすでに1万件以上の評価が集まっている。本書の邦訳版『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』から、その一部を特別に公開する。
「富の比較ゲーム」に参加してはいけない
年俸50万ドルの新人野球選手がいるとする。世間一般の基準からすれば相当なお金持ちだ。しかし同じチームにいる、12年、4億3000万ドルで契約しているマイク・トラウトと比べれば、このルーキーは一文無しも同然だ。
2018年のヘッジファンドマネージャー高収入トップ10に名を連ねるために必要な3億4000万ドル以上の年収に比べれば、1年当たり約3600万ドルというトラウトの収入もわずかなものにしか感じられなくなる。
同じく、2018年の高収入トップ5にランクインしているヘッジファンドマネージャーの年収7億7000万ドルと比べれば、トップ10のヘッジファンドマネージャーの収入もずいぶんと見劣りする。
このトップ5のヘッジファンドマネージャーも、2018年に個人資産が35億ドル増えたウォーレン・バフェットのような大富豪とは比較にならない。そのバフェットでさえ、2018年に純資産が240億ドル増えたジェフ・ベゾスには敵わない。ベゾスは、世間の基準で言えば間違いなく「お金持ち」の部類に属する新人野球選手の年俸以上の額を、1時間で稼いでいることになる。
要するに、他人と収入を比較してもきりがないということだ。比較をしている限り、誰も頂上には到達できない。これは決して勝つことのできない戦いだ。唯一、勝てる方法は、最初から戦わないことである。たとえ周りの人より収入が少なくても、「自分はこれで十分だ」と満足することが大切なのだ。
(本原稿は、モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』からの抜粋です)
ベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド社」のパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフル」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト
米国ビジネス編集者・ライター協会Best in Business賞を2度受賞、ニューヨーク・タイムズ紙Sidney賞受賞。妻、2人の子どもとシアトルに在住。