恣意的なコントロールができないことが条件

 また、言わずもがなであるが、市場の関係者が結果に対して恣意的なコントロールができないことも条件である。ヨーロッパでは、サッカーを中心にプロスポーツに対する多くの賭け(ブッキング)が行われているが、その前提はプレイヤーが全力をつくすことだ。八百長が行われてしまっては、賭けは成立しない。それと同じで、予測市場の関係者が結果をコントロールできる事象は、予測としては望ましくない。

 どのゲームメーカーも販売本数を伸ばすために営業努力を行なっていることを考えると、恣意的なコントロールが難しい指標であり、予測対象としては適している。

 次に、誰に予測してもらうかという問題がある。社内のメンバーで行う予測市場というのがまず思いつく方法である。一方、会員制Webサイトのアカウントをもつ同社ゲームの既存ユーザを対象に開設するという方法もある。これは、潜在的な消費者の意見を参照できるという点では望ましいが、参加してくれるだろうかという問題もある。また、ヒットするかどうかはわかったとしても、それが実際の販売本数やその水準まで理解しているユーザはそれほどいないだろう。

 そこで、2つの異なるタイプの市場方式を設定することとしよう。

 社員向けには、各タイトルの4週間の累計販売本数を予測対象とした株式市場型の市場を設計するのがよいだろう。社員であれば、おおよそヒット作が1週間に10万本程度であり、不調の場合には同じく数千本以下に落ち込むことも理解していることが期待できる。

 一方、会員ユーザに対しては、馬券タイプの市場を考えよう。馬券タイプでは、タイトルごとに一定の10万本以上売れた場合に払い戻されるチケットを設定しよう。

「とびだせケモノの森」の4週間での合計売上本数(ファミ通調べ)が50万本を超えるかどうか?
「アクティブ・サッカー2013」の4週間での合計売上本数(ファミ通調べ)が50万本を超えるかどうか?

というチケットを発券するのである。

 もちろん、それ以外にも方法はいくつかある。たとえば、「とびだせケモノの森」の販売数の詳細を見積もりたい場合は、下記のような証券の設定も可能である。

4週間での合計売上本数(ファミ通調べ)が10万本を超えるかどうか?
4週間での合計売上本数(ファミ通調べ)が5万本~10万本の範囲になるかどうか?
4週間での合計売上本数(ファミ通調べ)が1万本~5万本の範囲になるかどうか?
4週間での合計売上本数(ファミ通調べ)が1万本以下になるかどうか?

 今回はユーザのタイトルに対する相対的な期待を計測できればよいとして、より簡単な設定で取引の方が望ましいかもしれない。