「ゴリゴリの肩」「バキバキの背中」「ガチガチの股関節」「ジンジン痛む腰」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、悩まされるようになった体の不調。「肩がこる」「腰に違和感がある」なんてレベルではなく、痛みさえ生じることだってある。それもこれも「年をとったせいだ」と思いがちだけど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いなのです。
そこで参考にしたいのが、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)、『金スマ』(TBS系)、『体が硬い人のための柔軟講座』(NHK)などで話題のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、中高年はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも体が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、肩や腰がカチンコチンに硬くなった人が陥りがちな勘違いと柔らかい体をとり戻す方法を解き明かす!

(監修:田畑クリニック院長 田畑尚吾 医師)

【『世界一受けたい授業』で話題】<br />体がガチガチに硬い人はやってみて!<br />肩こり・腰痛解消だけではない…<br />ストレッチの“生死にかかわる”絶大な効果とは?Photo: Adobe Stock

ストレッチで血管を広げて
「動脈硬化」を予防する

【『世界一受けたい授業』で話題】<br />体がガチガチに硬い人はやってみて!<br />肩こり・腰痛解消だけではない…<br />ストレッチの“生死にかかわる”絶大な効果とは?中野ジェームズ修一
「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーほか、数々のオリンピック出場者を指導する。2014年からは青山学院大学駅伝
チームのフィジカル強化も担当。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。著書は『10年後、後悔しない体のつくり方』『いつでも、どこでも、1回20秒で硬い体が超ラクになる! スキマ★ストレッチ』(ともにダイヤモンド社)など多数

ストレッチで筋肉を柔らかくすることは、肩こりや腰痛といった身近な悩みに寄り添うだけではなく、生死にかかわる生活習慣病のリスクを下げることも考えられます。

すでに触れたように、日本人の死因の2位と3位を占める心臓病と脳卒中の背景には「動脈硬化」があります。動脈硬化の進み度合いを示す指標の1つに「脈波伝播速度」(PWV)というものがあります。

これは血管が細く硬く、血管壁が厚いほど、脈波伝播速度は速くなり、動脈硬化が進んでいることを示します。

体が硬い人ほど動脈硬化の進行が深刻

日本の国立健康・栄養研究所などの研究で、成人526人(男性178人、女性348人)を調べた結果、どの年齢層でも柔軟性が低くて体が硬くなっている人ほど、脈波伝播速度が速くなっていました。

とくに40歳以降では、体が硬いほど脈波伝播速度が速くて、動脈硬化の進行が深刻だと示唆されています(Poor trunk flexibility is associated with arterial stiffening. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2009)。

ストレッチと一酸化窒素の意外な関係

では、なぜストレッチで柔軟性を高めると、動脈硬化のリスクが下がるのでしょうか? 1つは、「一酸化窒素」(NO)に関連しています。一酸化窒素は血管を広げる働きがあり、血圧を下げて動脈硬化の進行にブレーキをかけてくれます。

何度か指摘しているように、硬くなった筋肉では、血管が圧迫されて、血流が悪くなっています。ストレッチで筋肉を伸ばすと、血管もゆるんで、血流がよくなります。その刺激(ずり応力)が血管の細胞を活性化すると、そこから分泌される一酸化窒素が増えてくるのです。

内臓脂肪を減らしやすくなる間接的効果

ストレッチには、動脈硬化を進める「高血糖」を抑える働きもあります。血糖値を下げるインスリンがうまく働かない「2型糖尿病患者」が、43gの糖質を含むフルーツジュースを飲んだあと、40分間のストレッチをした結果、ストレッチをしなかった対象群と比べて血糖値が低く抑えられることがわかっています(Nelson et al. Journal of Physiotherapy, 57:173-178, 2011)。

また、ストレッチで足腰の柔軟性を回復させると、間接的に動脈硬化を防いでくれます。ストレッチにより、股関節や足首の「可動域」が広がると、ウォーキングやジョギングでペースアップしやすくなります。

すると、同じウォーキングやジョギングでも消費するカロリーが増えて、動脈硬化の元凶の1つである「内臓脂肪」を減らしやすくなるのです。こうした効果を知ると、ストレッチをするモチベーションが、より高まりますね!

※本稿は、『10年後、後悔しない体のつくり方』より一部を抜粋・編集したものです。