先入観を排除し、チャートだけで売買判断する
窪田:だから、私は「チャートから社名を消して、見てみてください」とよく言うんです。
「この会社は最先端のバイオ技術をもった最高の企業だ」という先入観があると、「明確な売りシグナル」が出ていても目に入らなくなることがあります。
さらに、チャートをひっくり返して見ることをおすすめしています。冷静かつ客観的にチャートを見ることができます。
チャートを上下逆さにひっくり返して見ると、「売りシグナルは買いシグナル」に、「買いシグナルは売りシグナル」になりますね。上下逆さに見た時に、このように反対の売買判断を下せれば、冷静な判断ができているわけです。
しかし、チャートをひっくり返した時に、反対の売買判断を下せない場合は、先入観を抱えてチャートを見ている証拠です。
私は今では、実際にひっくり返さなくてもイメージできるようになりましたが、昔は毎週末にチャートブックを買ってきて、名前を伏せて、ひっくり返しながらチャートに「○、×、△」をつけていました。そうやって先入観を排除してチャートを見る練習を繰り返していたんです。
チャートで失敗する人のもっとも多いパターンは先入観。「この銘柄はいい銘柄だ」「悪い銘柄だ」と思っていると、判断が遅れます。
そうした人たちにチャートだけを見せてクイズを出すと、たいていみんな正解するんですよ。それなのに実際の売買ではその判断ができない。やはり原因は先入観ですよね。
「すごい会社だ」と信じ込む人ほど、損失が膨らんでいく
――実際、窪田さんが見てきたなかで、先入観が邪魔して正しい判断をできなかった印象的なケースはありますか。
窪田:現在進行形の銘柄は取り上げにくいので、かなり昔の話になってしまいますが、多くの人にとってわかりやすいケースは、ライブドアショックです。
ライブドアは一時期大きく急騰して、その後ライブドアショックで上場廃止になりましたけど、上場廃止になる前からチャートはあきらかに崩れていました。
でも、多くの人が「この会社はすごい会社だから」と思っているので損切りができない。ライブドアに限らず、本当によくある話です。
最近のコロナショックでも、コロナショックが起こる前から下落し始めてコロナで暴落し、その後は反発して上がってくるような動きをしている銘柄がけっこうありました。
こうした動きを、社名を伏せてチャートだけ見せれば、多くの人が正しい「売り・買い」の判断ができるんです。
しかし、いざ売買の場面になると、「こんなに下がっちゃったら、今さら売れない。もうちょっと待とう」なんて判断が遅れているうちに、さらに下がってしまうケースはたくさんありました。
反対に、底値から急反発してきれいな「買いシグナル」が出ているにもかかわらず、「この会社はコロナショックで業績が悪化しているから、買えない」って言う人は多いんですよ。その後、何回も「買いシグナル」が出ていても買えない。
そういう人に限って「不況下の株高」なんて言い方をするんですが、実際には、もう景気回復が始まっていたなんてこともよくあります。
チャートに素直に従っていれば、正しい判断ができるのに、余計な先入観がそれを邪魔するパターンは本当に多いです。