相場の「一歩先」を見ようとしてはいけない!

――窪田さんが体験した「悪い負け」で印象に残っているものはありますか。

窪田:大きな失敗として印象に残っているのは、1999年の失敗ですかね。その年の6月にスタートした投資信託のファンドがあって、私の投資顧問会社で「これを看板ファンドにしよう」ということで、私がファンドマネジャーとして運用を始めたんです。

 当時はITバブルの時期で、名ばかりのIT企業がたくさんあり、利益は全然出ていない状態でも、バンバン株価が上がっていたんです。その一方で、ITに関係ない企業は売り込まれていた状況です。

 当時の私は、そんな状況はさすがにおかしいと感じていました。ITバブルもそろそろ終わるだろうという思いもあって、そのファンドでは、IT関連銘柄の組入比率は押さえて、割安な銘柄を多く入れていたんです。

 ところが、私の予想に反してITバブルは99年の12月まで続き、株価が上がり続けたんです。

 ファンドというのは「東証株価指数に対して何%勝った、負けた」の勝負をしています。社運をかけた看板ファンドとして売り出したのに、半年で東証株価指数に10%負けたんです。

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――その後どうなったんですか?

窪田:その翌年、2000年になってからは、予想した通りITバブルが崩壊し、割安株が急騰し始めたので、そこから盛り返して2000年の4月までに東証株価指数に対する負けをすべて取り返し、その後もどんどん勝ち続けました。

――では、結果としては「勝った」ということなんですね。

窪田:それはそうなんですけど、これは決して「良い勝ち」とは言えないです。「悪い勝ち」です。

 たしかに、私は長期的に見れば勝っていく自信はあったのですが、これがもし半年ではなく、1年間ITバブルが続いていたら、私はファンドマネジャーをクビになっていたかもしれません。

 あのときの私は、チャートをちゃんと見ていないんですよ。短期的には、IT関連株はすごい勢いで上がっていて、それ以外は落ちているわけです。それなのに「相場の一歩先」を見ようとしてしまった。

 この出来事の教訓は「相場の一歩先を行こうとしてはいけない」ですね。

――「相場の一歩先を行ってはいけない」とは、いい教訓ですね。

窪田:実際にはITバブルに乗ったけれど、なかなか降りられずに大損した人も多かったのですが、もし私があのときに「一歩先」ではなく、チャートをきちんと見ていれば、ITバブルに乗りつつ、降りることもできたわけですからね。

 私が本当に尊敬できる投資家は、相場の流れが変わっても、ちゃんと勝ち続ける人です。ハイグロース株が強い相場でも、バリュー株が強い相場でも勝てる人です。好景気でも不景気でも、勝てる人です。

 ある流れのときは勝つけれど、流れが変わると勝てなくなる人は大勢います。しかし、本当に力のある人は流れが変わっても勝ち続ける。そんな人が、株で大きく資産を増やせる人だと思います。

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